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2008年11月11日(火) 18時20分

【元Vシネ女優初公判ライブ】(17完)掃除機ホース振り回して頭殴る 元女優と彼氏の“プレイ開始”産経新聞

 《法廷では、精神鑑定を行った女性鑑定医への反対尋問が引き続き行われている。弁護側は、女性鑑定医の問診時の記憶についても質している》

  ■写真&法廷ライブ■ 元Vシネ女優の傷害致死事件〜初公判全記録

 弁護人「藤家さんの(事件当日の)行動についてはどの程度覚えていますか?」

 鑑定医「2人で待ち合わせて買い物をして、彼女(木村衣里被告)のマンションに行き、買った物を食べてテレビを見ながら、確かハワイ行きの航空券の予約をパソコンで時間を費やしているうちに、藤家(英樹)さんが飲み足りないということで、近くのコンビニエンスストアに行ったと」

 弁護人「藤家さんは午前4時45分ごろにマンションから出て行ったということですが、この点の記憶は?」

 鑑定医「あります」

 弁護人「藤家さんはなぜマンションから出て行ったと考えますか」

 鑑定医「暴力があり、(衣里被告が)脳震盪(しんとう)で意識がないため、クーリングダウン(冷却期間)の目的で離れたと…」

 弁護人「藤家さんが洗濯物を持って行ったということは知っていますか」

 鑑定医「知りません」

 弁護人「(藤家さんが)マンションに戻ってきたのは精神科医としてどう考えますか」

 鑑定医「クーリングダウンして帰った後、セックスするというパターンがあるが、藤家さんは家に入るか入らないか躊躇(ちゅうちょ)していたと考えました」

 弁護人「背中の傷の原因は?」

 鑑定医「ナイフによる切り傷と考えますが」

 弁護人「藤家さん自身による自傷の可能性は?」

 鑑定医「(傷の位置が)自傷でできる場所でないため最初から考えませんでした」


 《はっきりとした口調で言い切る女性鑑定医。繰り返しの質問に多少苛立ちもあるのだろうか》


 弁護人「傷が藤家さんの自虐行為によるものとは考えませんか」

 鑑定医「藤家さんが頼んだということですか」

 弁護人「そうです」

 鑑定医「それは考えました」

 弁護人「なぜ?」

 鑑定医「抵抗の跡がないことと、(性的な)プレイで(藤家さんが)刃物に興奮するということなので、藤家さんが頼んだ可能性はあると」

 弁護人「朦朧状態は『せん妄』の中のひとつでしょうか」

 鑑定医「せん妄は大きな状態で、朦朧はその中にあります。朦朧のほうが症状は軽いかもしれません」

 弁護人「朦朧の状態が顕著に出た場合、自分の行為の善悪を判断する能力を欠くことはありますか」

 鑑定医「犯行時点では意識が清明であると考えるので、(判断能力が)ないということはないです」

 弁護人「なぜ?」

 鑑定医「犯行時点で意識が清明でなければ、できる傷口ではありません」


 《犯行時には記憶がなく、無罪であった−と主張する弁護側にとっては、なんとしても犯行時は意識が清明ではないと聞き出したいところ。だが、鑑定医は明確に否定した》


 弁護人「犯行時に意識が清明な根拠は傷口といいますが、せん妄状態では果物ナイフは握れない?」

 鑑定医「意識が混濁であればしっかり握るのは不可能と思います」

 弁護人「せん妄状態で興奮した場合でもナイフは握れないと?」

 鑑定医「集中力や注意力が散漫し、ナイフを握っても次の段階へと行動することは不可能と考えます」

 弁護人「不可能とは?」

 鑑定医「刺したとしても(ナイフを)抜くとかは不可能です」


 《弁護側は自分たちの主張に沿った言葉を聞き出せないでいる。一方で検察側は余裕の表情のようにもみえる》


 弁護人「藤家さんとのセックスのことは記憶にあるが、藤家さんから傷を見せられるまでの直前の記憶が飛んでいるというのはどういったことでしょうか?」

 鑑定医「わかりません」

 弁護人「というのは?」

 鑑定医「証明できませんが、あり得ることです」


 《ここで弁護側は質問を女性弁護人に交代する》


 弁護人「これまでは木村さんが傷つけられることがあったが、今回はなぜ藤家さんが傷つけられたのですか?」

 鑑定医「SM行為は日を重ねてエスカレートしていました。刃物が持ち出されることが増え、刃物で衣里被告に自分を傷つけてくれと頼んだことは十分考えられます」

 弁護人「今まで藤家さんから『刺してくれ』と頼まれたことがあったとは聞いていますか」

 鑑定医「聞いたことはありません」

 弁護人「犯行当日に衣里被告が脳しんとうになり、意識を失ったのは間違いない?」

 鑑定医「そうした時間帯もあったということです」


 《弁護人による反対尋問は終了し、裁判官による質問に移る。衣里被告は終始動かないままだ》


 裁判官「犯行当時の記憶が残っていないのは、不自然なことではないですか」

 鑑定医「はい、不自然ではありません」

 裁判官「脳しんとうというのは本人の口から聞いたのですか」

 鑑定医「調書の脳神経外科の診断書を参考にしました」

 裁判官「脳神経外科の診断ということですが、脳しんとうを起こして後から診察しても、診断はつくものなんですか」

 鑑定医「つきます。意識レベル、顔のむくみ、外傷など脳神経外科がいろんな角度から診断していればつけられます」

 裁判官「意識が回復するのはだんだん回復するものですか、それともすぐに回復するものですか」

 鑑定医「徐々にです」

 裁判官「先生の経験ですが、診察で性嗜好障害を見たのはどのくらいですか」

 鑑定医「20〜30件あります」

 裁判官「せん妄状態の患者はどのくらいありますか」

 鑑定医「数え切れないほどあります」

 裁判官「先生の判断で、脳しんとうはどの段階で起きたと思われますか」

 鑑定医「はい。彼女たちのプレイはまず、掃除機のホースをつかんで振り回し、彼女の頭を殴る。その時点で脳しんとうを起こしていたのではないかと思われます。同じマンションの住人が大きな物音を聞いており、それは被疑者が1人で出かけて戻ってきた時間の直後です」

 裁判官「本人の記憶で寝ていたら起こされたとありますが、それはどの時点ですか」

 鑑定医「彼が帰ってきた後です」

 裁判官「脳しんとうの意識障害が伴う『短時間』という表現はどのくらいの時間ですか」

 鑑定医「長くても6時間、最小は数分です」

 裁判官「被告人が飲酒しているのは(意識障害に)影響しますか」

 鑑定医「供述調書にあった分量を飲んでもらったが、臨床も脳波も変わらず、影響はゼロに等しいと判断しました」


 《裁判官の質問が一通り終わると、裁判長は「証拠を採用し取り調べたいと思います」と述べ、証拠調べの手続きが終了した。鑑定医が退出する際、衣里被告に軽く会釈すると、被告も深々と頭を下げて応えた》

 《続けて男性検察官が立ち上がり、事件当時の衣里被告の精神状態について一般論を交えつつ、改めて詳述する。検察側の意見か、鑑定医の証言を要約したものなのか不明だが「意識障害があったが、犯行時に善悪を判断する能力はあった」と締めくくり、この日の審理は終了した》

 《被告人席に座り、証人尋問などを聞いていた衣里被告の表情は、長い髪によって傍聴席からはほとんど垣間見ることはできなかった。しかし、被告人席の背もたれにもたれかかることもなく、背筋を伸ばし続ける姿に“女優”だった一面も垣間見えた》

 《次回公判は明日12日午前10時から。被告人質問と論告求刑、弁護側の最終弁論などが行われ、早々に結審する予定だ》

       =(完)

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