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2008年11月11日(火) 17時45分

【元Vシネ女優初公判ライブ】(15)犯行時の元女優「SMで脳しんとう、そして『せん妄状態』」と鑑定医産経新聞

 《15分の休憩を挟んで再開された公判。すでに午前中から通して4時間余りが経過しているが、元女優の木村衣里被告は疲れも見せず、ずっと背筋をまっすぐに伸ばした姿勢を崩さない》

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 《続いて出廷した証人は、衣里被告の精神鑑定を実施した女性医師。ここでも衣里被告は、深々と頭を下げて証人を出迎えた》

 検察官「これまでの鑑定歴をお聞かせください」

 鑑定医「起訴前(の被告に対する鑑定)が10件、公判中が3件、医療観察が10件と記憶しています」

 《次に、24ページに及ぶという女性鑑定医がまとめた鑑定書が示される》

 検察官「ここ(鑑定書)に書かれてあるのは、(鑑定医としての)経験と見識において、ありのままに記載したものに間違いありませんね」

 鑑定医「(よりはっきりした口調で)はい」

 《検察官が鑑定書の写しを裁判官や弁護人に配布し、本格的な質問を始める。検察側は衣里被告が犯行時、意識がはっきりしており、鑑定結果通りに責任能力があったと印象づけたいようだ》

 検察官「藤家さんを刺したときの被告の意識は鮮明だったのでしょうか」

 鑑定医「鮮明でした。それは被害者(藤家さん)のナイフの切り傷から『鮮明じゃないとできない』と判断しました」

 検察官「それはどういう意味ですか」

 鑑定医「分かりやすく言えば、注意力や判断力がないということは、歩行もできないくらいグラグラしていることになります」

 《藤家さんの背中の傷口は1カ所で、無理に抜いた跡もなかった。鑑定医は意識が鮮明でないと、傷口がもっとひどい状態になっていると言いたいようだ。鑑定医は捜査報告書の中にある数枚の写真をみて、その傷口の状況を知ったという。検察官は何度も傷口の所見を確認する》

 検察官「写真を見て、どう思いましたか」

 鑑定医「何度も言っていますが、表面はもちろんのこと、(背中の)中に達している傷口もクリア(鮮明)でした。精神的にブレがないというか、あるならもっとぐちゃぐちゃになっているだろうと思います」

 《精神鑑定にもかかわらず、本人に精神状態を聞くのだけではとどまらず、医師が傷口にまで注目しなければならなかった理由は何なのだろうか。検察官が、その素朴な疑問を尋ねた》

 検察官「傷口に着目したのはどうしてですか」

 鑑定医「本人が覚えていないとしたので、記憶を探りました。ただ断片的には覚えているので、(それをつなぎ合わせると、SM行為での)脳しんとうによる『せん妄』だと判断しました。そうしたとき(せん妄状態時)に意識が鮮明だったか、そうではなかったのかを裏付ける物的なものとして、写真に着目しました」

 検察官「せん妄というのは?」

 鑑定医「目がうつろで心身ともにフラフラの状態のことです」

 検察官「(衣里被告は)せん妄状態ではなかったのではないですか」

 鑑定医「せん妄といっても、さまざまな状態があります。要は精神的に定まらないということです。フラフラな状態だけではなく変化を続け、意識度が高いこともある」

 検察官「意識度が高いときは、どういう状態なのですか」

 鑑定医「自分の意思に従って、どんな行動でもとれます」

 《どうやら鑑定医は、衣里被告はせん妄状態にありながらも、意識度が高い状態にあったと言いたいようだ。その根拠として、傷口がぐちゃぐちゃになっていない藤家さんの写真の存在を挙げたという》

 検察官「『意識度が低い状態』と『高い状態』があるのですね。分かりやすい例えで言えば、どんな状態なのでしょうか」

 鑑定医「よくボクシングの選手は頭を殴られて脳しんとうを起こす。フラフラして倒れるときもあるが、比較的はっきりとした意識があって相手にパンチを浴びせることもできる。こんな例えでどうでしょうか」

 検察官「意識が下がり続けることはないのですか」

 鑑定医「続くことはないでしょう」

 検察官「もうろうとした状態でも、まとまった行動ができるということですね」

 鑑定医「もうろうは一時的なもの。今回のようなケースは、一見まとまった行動をとっており、軽いと思われます。百歩譲って、一見まとまった行動を取っていても無意識や無目的な状態だと、被害者は不意を突かれた形になり、抵抗する痕があるはずです」

 《鑑定医は意識的に衣里被告が刺したと暗に示したばかりか、藤家さんもSM行為の延長線で受け入れて刺されたとするような所見を述べた。衣里被告は鑑定医の意見にも動じることなく、静かに姿勢を伸ばし続けていた》

    =(16)に続く

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