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2008年11月11日(火) 15時46分

【元Vシネ女優初公判ライブ】(12)解剖医「自分で刺すのは難しい」「刺し、すぐに抜いた傷」産経新聞

 《証拠調べも大詰めだ。女性検察官が立ち上がり、犯行に使われたとされる果物ナイフとジャンパーが被告人席の木村衣里被告に示された。最初に提示されたのはナイフだ。検察官が法廷の中央まで歩み寄り、ナイフを掲げると、刃の部分が蛍光灯に反射し不気味に輝いた。黒い柄の部分は、鑑定のために削られている》

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 検察官「これはあなたのものですか」

 衣里被告「家にあったものならば、私のものです」

 《犯行に使われたとみられる凶器を見せられ、か細い声で答える衣里被告。続いて示されたジャンパーはベージュで、背中の部位には事件でできた穴があいていた。いずれも裁判長に手渡されると、検察官の証拠調べが終了した》

 裁判長「続いて証人尋問に移ります。検察官と弁護人はこちらに来て下さい」

 《双方を呼び寄せ、証人尋問の手順などを打ち合わせているようだ。その数分後、証人の男性が入廷する。男性は藤家英樹さんの司法解剖を行った医師だ。法廷で偽証しないことを宣誓すると、証人席に座り別の女性検察官の質問に答え始めた》

 検察官「被害者の藤家さんの解剖をした解剖医ですね」

 解剖医「はい」

 検察官「簡単に経歴と司法解剖の経験を教えて下さい」

 解剖医「平成4年に京都府立医大を出て…(中略)現在は東京医科歯科大の教授です。解剖は平成5年から行っており、今まで450体の解剖、その7割で鑑定書を作成してきました」 検察官「藤家さんと同じような刺創は?」

 解剖医「そのうちの1割程度です」

 《検察官は席を立ち、証人に捜査報告書を示す》

 検察官「これは検察官が先生から所見を受け、死因の意見をうかがったもので、内容を確認して署名してもらいましたね?」

 解剖医「はい」

 検察官「事実として記載されている部分ですが、これは実際に解剖して見分した内容ですね」

 解剖医「はい」

 検察官「意見の部分ですが、これは先生の経験にもとづいて意見したものですね」

 解剖医「はい」

 検察官「藤家さんの左肺の刺創は自傷によるものか、第三者によるものでしょうか。先生のご意見はいかがでしょう?」

 《検察は争点の1つでもある「藤家さんを刺した人物」について、本人ではなく、他人によるものであることを、解剖医の話から立証する狙いだ》

 解剖医「背中にほぼ水平方向にきれいな切創があり、(刺したのが)本人か他人かと聞かれると、本人では難しい場所。他人の可能性が高いです」

 検察官「ほかに他人の可能性を示すものはありますか」

 解剖医「体が動くと傷口がギザギザになります。なので刺してすぐ抜いたと考えられ、自分でやるのは難しいと考えられます」

 検察官「藤井さんは刺されたとき、動いていなかったということですか」

 解剖医「傷口からすると動いていないと思います」

 検察官「第三者である根拠はありますか」

 解剖医「傷からは刺してすぐに抜くという一瞬の出来事だったと思われます。自分でやっていたら痛みもあり、抜くときに体が動いてしまいます」

 検察官「アルコールが検出されたことは関係しますか」

 解剖医「血中からは1・8ミリリットルのアルコールが検出されており、ちょうど中度の酩酊(めいてい)状態で、日本酒なら4、5合を飲んだ状態。手が震え、正確な動作は難しいでしょう」

 検察官「事件前、藤家さんはコンビニに行っており、そのときはふらついていないという証言もあります。そういう状態でも(自分で刺すことは)難しいですか」

 解剖医「足取りなどは体質によっても違いますが、それでも手を使った細かい動作は影響が出るでしょう」

 《検察の思惑通りの答えが引き出せているようだ。衣里被告は被告人席で背筋を伸ばし、まっすぐ正面を見据えている。落ち着いた様子だ》

    =(13)に続く

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