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2008年11月11日(火) 14時32分

【元Vシネ女優初公判ライブ】(6)「男は寝てみないと分からない」おじいちゃん子、天真爛漫、寂しがりや産経新聞

 《裁判長による争点の確認が行われると、証拠調べの手続きが始まった。検察官は再び立ち上がり、木村衣里被告が所属していた芸能プロダクションの経営者の供述調書を読み上げ始めた》

  ■写真&法廷ライブ■ 元Vシネ女優の傷害致死事件〜初公判全記録

 検察官「2月1日にインターネットのニュースで、藤家英樹さんが衣里に刺されて死亡し、衣里が逮捕されたことを知りました」

 《検察官は衣里被告が平成9年に同プロダクションに入り、雑誌のグラビアからVシネマ、写真集の出版など順調に仕事を増やしていったことを一通り説明。そして、供述調書は交際していた藤家さんとの関係に及ぶ》

 検察官「衣里が『彼氏と待ち合わせしている』というので車で送ると、ジャガーに乗ったこわもての40歳くらいの男がいた。小さいころ両親が離婚したため『おじいちゃん子で20歳くらい年上の人が好み』と言っていたので、不思議には思いませんでした」

 《しかし、徐々に様子がおかしくなる。Vシネマの撮影に衣里被告が顔を腫らして現れたというのだ》

 検察官「(木村被告は)『ぶっとばしてでも叱ってくれるのは彼だけ。暴力もコミュニケーション』と話していた。理解できなかったが、そんな男女関係もあるのかと思い、Vシネマの監督に謝りました。その後、衣里には『付き合うのは避けた方がいい』と言ったら『別れました』と言っていたので、別れたと思っていました」

 《続いて、プロダクション経営者からみた衣里被告の性格が語られる》

 検察官「天真爛漫(らんまん)で明るく、スタッフや共演者からも人気があったが、向上心が足りず、我慢ができない性格だったので、中途半端な状態で芸能界を引退してしまった。また、普段から『男は寝てみないと分からない』と言っていたので、そういった関係の男性は多かったとは思いますが、プライベートは黙認していました。一匹オオカミ的な性格で、友人などもいなかった。ただ、交際していたのは藤家さんだけではないかと思います」

 《続いて検察官は、衣里被告と長年の付き合いという、友人女性の供述調書を読み上げる。女性は14年前に新宿の洋服店で店員として働いていたときに、客の衣里被告と知り合った。この女性には藤家さんのことを「アントウさん」などと呼んでいたという。周囲には違う名前や、それをもじった愛称で紹介していたらしい》

 検察官「『病気のときにはアントウさんがみてくれていた』と話していました。殴ったり蹴ったりされており、『別れようかなー』と話していた。携帯も2、3台壊されていました。私が実際にけがを確認したのは、耳の上にできたたんこぶと、目の上に残っている傷です」

 《友人にも隠すことなく、藤家さんからの暴力を話していた衣里被告。この女性の供述調書によると、交際が親密になってから1年後には暴力もひどくなっていったという。調書の読み上げが続く》

 検察官「(女性を含めた)3人で飲んでいるときはそういうこともなかったが、2人だけで飲んでいると殴られていたようです。携帯電話に出ないとか、互いのヤキモチなど些細(ささい)なことでけんかが始まり、エスカレートしていくうちに暴力が始まったようです。衣里も気が強いので『アントンさん蹴ってやった』とか言ってました。最近は殴られたといった話は聞いていません」

 《さらに検察官は同じ女性から取った別の供述調書も読み上げる。内容は2人の印象についてだ》

 検察官「けんかの話を聞いたら、そのつど『衣里が悪い』『アントウさんが悪い』とアドバイスしてました。私からみたら、仲の良い恋人同士でした。一時的に悪口を言うこともあったが、後を引くようなことはありませんでした。(衣里被告が)『離れようかな』と話したこともあったが、それでも別れずに付き合っていました。何度もけがしているのに。衣里が人一倍の寂しがり屋だったことも原因かもしれません」

 《続いて検察官は、衣里被告の母親の供述調書を読み上げる。周囲に藤家さんとの交際について包み隠さず話していた衣里被告だが、母親には詳しく明かしてはいなかったようだ。事件を聞いた母親は、藤家さんとの交際が続いていたことに驚いたという》

 検察官「『藤家』という名前は1月26日に、刑事さんから聞いて初めて知りました。家に戻ってきた衣里ちゃんに聞いたら、『アンドウさんのことだよ』と言ってました。アンドウと聞いて愕然としました。平成13年春ごろ、衣里ちゃんと暮らしていて、マンションの外から声がして外に出ると、衣里ちゃんが口から血を流していた。左を見ると男(藤家さんが)仁王立ちしていました」

 《衣里被告は、母親には「アンドウ」と紹介していたようだ。引き続き、母親が藤家さんと出会ったときの様子が読み上げられる。以来、母親には「アンドウ(藤家さん)=危険な男」という図式が出来上がったという。そして検察官は、事件があった1月26日に自宅に帰ってきた衣里被告の様子を詳述する》

 検察官「26日は部屋のベッドで休ませました。何があったのか知りたく、私が『ママびっくりしている』と言うと『私もびっくりしてる』と答えました。『藤家って誰?』と聞くと『ママも知ってる人。アンドウさん』と聞いてびっくりしました。『まだ続いてたの』と声をかけたが、これ以上は混乱させてしまうと思い、朝まで様子を見てました。うなされた様子はありませんでした」

 《娘に殴られたような跡があり、以前も暴力をふるわれたことがあったので、それに衣里被告も巻き込まれたのではないかと思ったという母親。検察官は供述調書の読み上げを続ける》

 「27日になり『命あるのが不思議なくらい。なんで別れないの?』と声をかけたら『苦しい、思い出したい』と言っていました」

 《その後、母親は衣里被告の記憶をたどるため、「言葉を文字にしてみたら」とアドバイスし、スーパーで画用紙を買って渡したという。検察官はそのときに衣里被告が書いた絵と文字を、法廷の両脇にあるテレビモニターに映し出した。文字は解読できないが、用紙の右側には事件の経過が書かれているとみられるチャート図が、左側には事件現場とみられる部屋の間取り図が書かれ、室内には藤家さんとみられる人間が倒れている》

 「藤家さんは亡くなったということで、本当のことは2人しか分かりませんが、家族がいるので申し訳ないと思います」

 《親しくしていた人の供述調書が読み上げられる間、衣里被告は終始うつむいたまま身動きすることもなかった》

     =(7)に続く

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