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2008年11月10日(月) 00時00分

パナソニック・三洋連合 次の再編へ?読売新聞

 パナソニックが三洋電機の子会社化で基本合意したことで、売上高が11兆円に達する国内最大、世界第2位のメガ電機グループが誕生する。

 家電から環境技術まで手中に収めるパナソニック—三洋連合は、企業や家庭向けに普及が見込まれる太陽電池や、ハイブリッド自動車などで利用が見込まれるリチウムイオン電池で成長を目指す。世界的な景気悪化で、半導体の市況低迷や円高などで経営環境が厳しさを増す日本の電機大手にとっては脅威で、新たな再編の呼び水になる可能性がある。(経済部 中川賢、船木七月、滝沢康弘)

電機専業メーカーとしては世界トップ

三洋(手前)とパナソニックの洗濯機が並ぶ家電売り場(大阪市北区のヨドバシカメラで)=奥村宗洋撮影

 パナソニックの大坪文雄社長は、7日夜の記者会見で「三洋は(電池などの)エネルギー領域ですばらしい技術力と商品力を持つ。ノウハウと経営資源を最大化して競争力を一段と強化したい」と、三洋を子会社化するメリットを強調した。

 世界首位の米ゼネラル・エレクトリック(GE)とは売上高で約6兆円の開きがあるが、GEは金融事業などの売上高が過半で、世界的な金融危機で150億ドル超の増資を余儀なくされるほど財務体質が悪化している。パナソニック—三洋連合は、電機専業のメーカーとしては事実上、世界首位で、財務体質も強固だ。

電池事業が成長エンジン

 また、電気自動車向けなどに需要の急拡大が見込まれるリチウムイオン電池で、世界シェア(市場占有率)首位の三洋と、3位のパナソニックのタッグは、ソニーなどほかのメーカーを圧倒する。

 大坪社長も「太陽電池は三洋が成長事業として育てている。(両社が手がける)自動車用の電池は全体の市場は爆発的に伸びる」と電池事業が成長のエンジンとなることを期待している。

 富士キメラ総研によると、リチウムイオン電池の世界市場規模は、2012年には05年実績の1・5倍の7492億円に拡大する見通しだ。携帯電話だけでなく、ハイブリッド車や電気自動車向けの電池需要が10〜12年にかけて本格的に伸びる見込みのためだ。

 自動車向け電池で、パナソニックはトヨタ自動車と提携し、三洋は特定のメーカーに絞らず、全方位で電池を供給している。今後、パナソニックは三洋を取り込むことで、トヨタ以外にも供給する道筋ができる。

 また、調査会社の富士経済によると、三洋が得意とする太陽電池の世界市場は12年には07年の3・9倍の4兆6751億円に達する。07年のメーカー別生産量のシェア(占有率)は、ドイツ・Qセルズが10・4%で世界一、2位はシャープで、三洋は7位。パナソニックは太陽電池から撤退しているが、世界的な販売網を提供することで、三洋はシェア拡大が見込める。

金融危機で事業買収の好機

 パナソニック—三洋連合は、国内電機大手にとっては手ごわいライバルとなりそうだ。国内大手は、日立製作所が07年にGEと原子力事業で合弁会社を設立したり、シャープとソニーが液晶パネルの合弁会社設立で合意するなど、事業分野ごとの提携は進んでいる。しかし、買収金額が数千億円に上る、今回のような大規模な再編劇は国内電機業界では、事実上、初めてだ。

 電機業界は、円高、原材料高、製品価格の下落という「三重苦」により、08年9月中間連結決算で、大手8社中6社が減収となった。

 東芝は市況悪化で、半導体事業が不振となり、赤字に転落、薄型テレビの「勝ち組」と言われてきたシャープも携帯電話の販売不振で、中間期としては7年ぶりの減収減益となった。

 ソニーは円高・ユーロ安が業績を直撃した。現地生産が少ない欧州向けのデジタルカメラなどの輸出品の採算が悪化して、09年3月期の連結営業利益の業績予想を、7月時点より2700億円少ない2000億円に下方修正した。

 海外でも、韓国のサムスン電子が、業績の低迷や通貨ウォン安の影響で、米半導体大手サンディスクへの買収提案を撤回するなど、各社とも成長戦略の見直しを迫られている。

 東芝の西田厚聡社長は、原発と半導体事業を柱に、売上高を10年度に06年度の1・4倍にあたる10兆円に増やす方針だったが、半導体市況の悪化などで計画にずれが生じ、10兆円の大台突破はパナソニック—三洋連合に先を越された。

 世界的な金融危機に伴う消費の冷え込みは、「パナソニックのような資金が豊富な企業にとっては、事業買収の好機」(別の大手電機役員)でもあり、さらなる電機の大型再編が起きる可能性がある。

統合劇1年前に予言…漫画「島耕作」

 漫画雑誌「モーニング」(講談社)に「社長 島耕作」を連載中の漫画家、弘兼憲史さんは、前作の「専務 島耕作」で、パナソニックがモデルの「初芝電器産業」と、三洋電機がモデルの「五洋電機」の統合劇を描いた。

 初芝が、五洋電機の株を取得して、持ち株会社「初芝五洋ホールディングス」を設立させるというストーリーだ。

 弘兼さんは元パナソニック社員で、「電池などに突出した技術力を持つ三洋電機に、外資系ファンドなどが入り、バラバラにされていくのは良くないと思い、1年ほど前に初芝が五洋を救済するストーリーを考えた」と言う。

 漫画では、経営統合をまとめ上げた功績で島耕作が専務から社長に昇格した。弘兼さんは「島は統合後もリストラをせず、『五洋』のブランドも残した。パナソニックと三洋の統合でも、雇用が守られれば(両社の)融和が進むのでは」と期待している。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20081110nt01.htm