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2008年11月10日(月) 23時37分

バリ島テロ実行犯処刑 「殉教者」扱い「報復」叫ぶ群衆産経新聞

 【シンガポール=宮野弘之】2002年のバリ島爆弾テロの実行犯3人の死刑から一夜明けた10日、インドネシアの首都ジャカルタでは、新たな爆弾テロ予告があり、インドネシア警察当局は警戒態勢をさらに強化している。同国のイスラム教徒の大半は処刑を冷静に受け止めているが、3人の地元では、3人を「殉教者だ」として棺(ひつぎ)を取り囲んで行進。声高に報復を叫び、一部は警官隊と衝突する場面もあった。

 ジャワ島西部のセランでは、テロ首謀者のサムドラ死刑囚(38)の棺を多くの人々が迎えた。同死刑囚はイスラム過激派組織ジェマ・イスラミア(JI)の幹部だが、ロイター通信によると用意された墓には「殉教者を歓迎する」と書かれていた。

 同じくJIメンバーのムクラス死刑囚(48)と弟のアムロジ(47)死刑囚の地元、ジャワ島東部テングルンでも数百人の群衆が棺を囲み、葬儀の場所まで行進した。イスラム神学校近くにいた17歳の少年は、AP通信に「彼らは聖戦士だ。処刑されるべきではなかった」と話し、周りの大人と一緒に「報復」を叫んでいた。

 一方、10日にはジャカルタの7つのホテルなどに爆弾を仕掛けたとの電話があったが、今のところ爆弾は見つかっていない。

 サムドラ死刑囚ら3人の銃殺刑は9日未明、ジャワ中部にあるヌサカンバンガン島刑務所近くの畑で行われた。インドネシア検察当局によると、3人は最後まで悔悟の様子をみせず、目隠しも拒否したという。

 同事件では30人の容疑者が逮捕された。3人は犯行は認めたが、「テロは、アフガニスタンとイラクに侵攻し、イスラム同胞を苦しめた米国などに対する報復だ」と正当性を主張。死刑判決が下ると今度は銃殺ではなく、イスラムの伝統にのっとり断頭とするよう要求。さらに処刑すれば必ず報復があるとしていた。

 このため、インドネシア当局は死刑執行の日時を直前まで明らかにせず、処刑後、家族が遺体を清めたあとも混乱が予想される陸路での輸送を避け、ヘリコプターでそれぞれの地元に送った。

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