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2008年11月10日(月) 22時08分

<中国>57兆円の緊急経済対策 成長率下振れに強い危機感毎日新聞

 【北京・大塚卓也】2010年までに約57兆円の財政資金を投じる中国の緊急経済対策は、欧米経済の悪化によって自国の成長率が想定以上に下振れすることに強い危機感を抱いていることの表れだ。14日からの緊急首脳会議(金融サミット)には胡錦濤国家主席自ら出席するが、その直前のタイミングを逃さず大規模な内需拡大策を具体化し、「急速にしぼむ世界市場を下支えする中国」という構図を各国に印象付けたい思惑もある。

 9日、ブラジルで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議に出席した中国人民銀行の周小川総裁は、来年の中国の経済成長率が「8%と9%の間になるだろう」と語った。これは、緊急対策を打たなければ、社会の安定を保つ「最低ライン」とされる8%成長は維持できないとの懸念を初めて示唆した形だ。

 今年1〜9月の輸出額は前年同期比22.3%増とプラスを維持したが、「欧米向け輸出の減速を、東南アジアやアフリカなどへの増額で維持している状態」(外交筋)という。中国メディアでは、広東、浙江省などの南部沿海地区に集中する電機部品などの企業の倒産や、仕事を失った出稼ぎ労働者の苦境が連日報じられている。北京五輪後も「経済成長を続ける基礎的条件は何ら変わらない」と楽観論を示していた政府幹部らが最近南部視察を繰り返すことにも、労働者の抗議行動などへの警戒感がにじむ。

 ただ、金融危機への対応として、国際通貨基金(IMF)など国際金融システムの改革を主張する欧州勢と比べ、中国の立場は必ずしも鮮明ではない。国際通貨体制の議論の中で浮上する可能性がある「基軸通貨の多様化」などをめぐって、人民元の閉鎖性や中国の巨額の外貨準備に焦点が当たることを避けたい意向もあるとみられる。

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