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2008年11月09日(日) 15時00分

抑えきれぬ性衝動 痴漢ストーカー男の卑劣な手口産経新聞

 被害者の女性は男を「痴漢」と確信し、「ストーカー」のような湿った視線を向けてくる男に恐怖心を抱いた−。手の甲で服の上から女性の胸を触り、大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われた元会社員の男(27)は6日、大阪地裁で開かれた初公判で罪を全面的に認め謝罪した。だが、この3年間に2回、同じような痴漢行為で罰金刑を受けていることを検察官に指摘され、懲りない男の常習性が明らかになった。女性の胸に執着した末、ゆがんだ性衝動をふくらませた男が思いついた、驚きの犯行手口とは…。

 検察側の冒頭陳述などによると、男は大学卒業後、大阪市内のOA機器販売会社に就職し、営業を担当。会社が社宅として借り上げた近くのマンションに同僚と同居していた。被害者の女性に目を付けたのは、出勤途中の路上だった。女性も近くの会社に勤務しており、よく見かけるようになった男はなぜか、「胸を触りたい」という異常な欲求を抑え切れなくなり犯行を決意した。男の手口はこうだ。女性を見つけると背後から近づき、いったん追い抜く。その直後、急に真後ろに方向転換、ぶつかる瞬間に手の甲を女性の胸に押し当て、偶然を装う。

 女性が最初に被害にあったのは今年3月。出勤途中に寄ったコンビニエンスストアから出ると突然、男が前を歩き始め、急に振り向いて胸を触られた。このときは偶然ぶつかったと思い込んでいたが、その後も男は出勤途中に不自然に近づいてきたり、やたらと身体を凝視してくるようになった。そして6月。再び通勤途中に男が同じように手の甲を胸に押し当ててきたため、女性は痴漢行為と確信した。翌月2日、3度目の痴漢被害に遭い、「ストーカーのように狙われている」と恐怖感が募り、3日に警察に被害申告した。翌日。通勤路を張り込んでいた警察官に職務質問された男は犯行を認め、逮捕された。

 初公判に出廷した男は、黒いスーツに白いワイシャツ姿。おそらくこのスーツを着て出勤していたのだろう。まじめな普通の会社員という感じだ。検察官は冒頭陳述で、平成17年7月と昨年9月、電車内で揺れて倒れかかったのを装って近くにいた乗客の女性の胸を触り、府迷惑防止条例違反罪で2回罰金刑を受けていることを明らかにした。弁護人は被告人質問で犯行の経緯や動機を聴いた。

 弁護人「以前にも同じような罪を犯していた。なぜまたやったのか」

 男「自分の中でストレスがたまり、ゆがんでしまった」

 弁護人「ストレスとは」

 男「同僚と一緒に住んでいたので、会社も自宅も同じでプライベートがない感じで…」

 弁護人「だからと言って痴漢されたら女性はたまらないでしょう」

 男「はい。すみません」

 男は神妙な様子で質問に答えていく。

 弁護人「被害女性に好意を持っていたんですね」

 男「タイプでした」

 弁護人「だったら告白すればよかったのに」

 男「直接言いにくく、ゆがんでしまった」

 弁護人「反省していると言うが、今後どうする」

 男「もう二度としません。これからの自分を見ていただいて信用を得るしかないです」

 続いて検察官が質問。これまでに二度も罰金刑を受けていることなどを踏まえて厳しく追及した。

 検察官「ストレスが原因だと言うけど、ストレスのない人生なんてあるんですか」

 男「ないです」

 検察官「人間関係で悩んだり、ストレスの原因なんてたくさんあるでしょう」

 男「発散する場がなくて。プライベートもないし、管理されている状態が続いていたので…」

 検察官「前に罰金刑になって『二度とやりません』って言ってからまたやってますよね」

 男「自分の気持ちを抑えきれなかった」

 検察官「刑務所に入ってたたき直してもらった方がいいんじゃないですか」

 男「…」

 裁判官も終始あきれた表情を浮かべ、判決前の段階なのに、こう断罪した。

 「あなたの話は正直理解できない。営業もしているし、賢い人だと思うから『反省している』とは言えるだろうけど、上っ面だけ取り繕っているなら刑務所へ行った方がいい」


 検察側は男の常習性を指摘し、再犯の恐れが高いとして懲役6月を求刑。弁護側は、内気な性格で女性に好意を示すやり方が分からなかった男の未熟さを訴え、罰金刑か執行猶予付き判決を求め、即日結審した。男がこれまでに犯した2回の犯罪は略式命令による罰金刑だった。今回初めて公判請求され、両親が見守る中で裁判を受けた。被告人質問に先だって行われた証人尋問で、「もう一度チャンスを与えてほしい」と懇願する半面、「もしまたやれば親子の縁を切る」と涙ながらに語った父親の姿はどう心に響いたのだろうか。ストレスがたまった末、女性へのゆがんだ好意をふくらませたとする男の説明は、裁判官が指摘するように理解し難く、簡単に更生できるとは到底思えない。「二度としません」という言葉に説得力はまるでなかった。判決は13日に言い渡される。(津田大資)

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