記事登録
2008年11月09日(日) 19時54分

逮捕前日も1泊9万円の最上階スイート 小室容疑者の行く末は産経新聞

 盛者必衰、おごれるもの久しからず。大阪地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された音楽プロデューサー、小室哲哉容疑者(49)はまさにそれを地で行った。海外の豪華な別荘、高級外車、ファーストクラス借り切りの「セレブ生活」から一変、現在は大阪拘置所(大阪市)内の3畳半の独居房生活へと転落した。「ファンのみなさんに申し訳ない」。最近の検事の取り調べでは、反省の弁を口にしながら淡々と事実関係を認めている。

【写真】小室哲哉容疑者の自宅マンション

 ■バーキンぶら下げ

 4日午前8時ころ、JR新大阪駅に近いホテルから、大阪地検の係官に連れられて小室容疑者が出てきた。目には涙。顔に生気がなく、うっすらと笑みを浮かべていた。

 最後の虚栄心なのだろうか。前日はホテル最上階の1泊9万円のスイートルームに宿泊した。部屋から出てきたときには、左肩に高級ブランド「エルメス」の超高級バッグ、白色の「バーキン」(約100万円)を下げていた。

 1990年代半ば(平成6〜9年)、安室奈美恵さんや華原朋美さん、trf(現TRF)、globeなど「小室ファミリー」と呼ばれる人気アーティストを引き連れ、ミリオンセラー20曲を生み出した小室容疑者。

 芸能関係者によると、小室容疑者は「預金通帳は10ケタまでしか表示されないから」と話し、一時は100億円以上の資産を築き上げたといわれる。

 小室ファミリーの誕生日には、1000万円もするフェラーリをプレゼントしたとも伝えられる。

 しかし、音楽配信事業を行うため10年に設立した香港の合弁会社を13年に株式上場。数年後に株価は10分の1にまで下落し、数十億円の負債を抱えたという。

 わずか10年で資産を食いつぶし、さらに10億円以上の借金を抱え込んだ。ここ数年は金融機関に金策に走り回り、犯行直前には単利で年60%、複利では年79・6%になる“高利貸し”に手を出すまでに。

 それにもかかわらず、家賃月200万円以上の東京都港区西麻布の高級マンションで生活。ボディーガードなど事務所運営費は月1000万円にも上る「セレブ生活」を続けていた。

 ■うその上塗り

 特捜部の内偵段階では「誰かに利用されたのだろう」(地検幹部)と“黒幕”の存在もいぶかしがったが、「調べれば調べるほど、小室容疑者自身の主犯性が際立ってきた」(同)という。うそにうそを塗り重ねる小室容疑者の手口に検事もあきれかえった。

 「全部僕に著作権があります。バラバラではなくて、僕の過去の作品806曲がフルセットになっているということに、意味があるし、価値が出るんですよ」

 平成18年7月末、東京都内のホテルで兵庫県内に住む個人投資家(48)に会った小室容疑者は、すでに音楽出版社に譲渡していた権利をあたかも自身にあるかのように装った。

 さらに、元妻から慰謝料7億円が請求され、著作権使用料が差し押さえられている話を持ち出し、「5億円を先に支払ってもらえれば差し押さえが解除できる」と要求。実際には、前払い金は差し押さえ解除に振り向けられることはなく、小室容疑者の借金の返済に消えていた。

 「僕はこれでも名の知れた男だ。逃げも隠れもしない」。

 当時、投資家にそう豪語したにもかかわらず、小室容疑者はその後の昨年10月、逃げるどころか、催促電話を再三かけてくる投資家に対し「精神的に不安定になり、作曲活動に支障をきたすようになった」などと慰謝料1億円を請求する訴訟を提起するという挙に出た。

 なかなか理解しにくい複雑な著作権ビジネス。文化庁に問い合わせれば、小室容疑者に譲渡の権利がないことは明白だっただろう。だが、素人にうそを見抜く目はない。

 小室容疑者はそこにつけ込んだのか…。

 ■和製マイケル

 「自分のお金を自分でどれだけ使っているかわからない」

 全盛期にそう話していたという小室は、まさに「裸の王様」だったのだろう。

 周囲からは「TK」と呼ばれ、進言、注意してくれる人はいなかった。妻のKEIKOさんでさえも夫を「先生」と呼んでいたという。

 今年4月には、告白本を出版する計画もあった。人気下降後の最近の4年間についてつづろうとしたものだったが、イメージ悪化を心配したのか、企画段階で中止になった。自らの人生の“恥部”をさらけだしてでも資金を工面しようとした切羽詰まった状況がうかがえる。

 今年の夏には、「キング・オブ・ポップ」と呼ばれたマイケル・ジャクソンとの共同コンサートの計画もあった。

 音楽の世界で頂点を極めながら、後に自らの原盤権を切り売りして転落したマイケルとの重複から、近年の凋落ぶりを知る芸能関係者は小室容疑者のことを「和製マイケル」と呼ぶ。

 「金銭的、精神的余裕がないから最近、いい曲が書けていなかった。globeの復活も最後の悪あがきだったのだろう」

 そう語るのは芸能リポーターの梨元勝氏。

 globeの2年半ぶりの新曲の発売が今月26日に予定されていたが、今回の逮捕で中止に。さらにテレビ各局は、小室容疑者の手掛けた楽曲の放送を見合わせた。

 ファンの期待を裏切った代償は大きい。

 「これからの人生は大変険しいものですが、共に歩む覚悟です」

 逮捕後に発表されたKEIKOさんのコメントも痛々しいものだった。

 詐欺罪の最高刑は懲役10年。仮にこのまま罪を認めて有罪判決が下った場合、投資家に被害弁償していれば執行猶予が付く余地もあるかもしれないが、今のところ、返済できるめどはない。そうなれば、被害額から懲役5年前後の実刑は固いとみる法曹関係者は少なくない。

 塀の外に出たとき、小室容疑者の目に映るものは何だろうか。

【関連記事】
小室、残高たったの6259円 口座仮差し押さえで判明
小室にエイベックス社長がエール「近い将来再び活躍を」
ホリエモン小室容疑者に独房ライフ指南!?
締め出し“小室サウンド” YouTubeでは人気急上昇
KEIKO、離婚否定「共に歩む覚悟です」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081109-00000528-san-soci