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2008年11月08日(土) 14時01分

紀元会集団暴行:「信者をあおった」 主導性認める−−元幹部判決 /長野毎日新聞

 小諸市の宗教法人「紀元会」信者による集団暴行死亡事件で、傷害致死などに問われた元教団幹部、窪田康子被告(50)に対し、長野地裁は7日、懲役12年を言い渡した。最大の争点だった主導性について、土屋靖之裁判長は「被害者を責めたて信者をあおり、暴行を具体的に指示した」と認定。事件発生から約1年、起訴された26人全員に1審有罪判決が下されたことになる。
 検察側は公判で、窪田被告を「教団内の絶対的権力者」と位置づけ、暴行の主導性を主張する一方、弁護側は一貫して否定していた。土屋裁判長は判決で、窪田被告が「強い影響力を有している」と認定した。
 判決では、教団幹部に避妊具付きのベストを準備させたことなどから、計画性を指摘。奥野さんの次女に対して「中学生だった窪田被告の長女に避妊具を渡した」ことを怒鳴りつけて暴行を加えたことが「契機になった」とした。さらに複数の証言から、集団暴行の「原因と責任が被告人にあるのは明らか」と断じた。
 また、奥野さんの夫らの供述を採用し、犯人隠避教唆罪を認定し「重大事件に対する適正な捜査が妨害された」と判断した。
 長野地検の高森高徳次席は「事実認定、量刑ともに極めて妥当な判決」とコメントした。弁護側は「控訴するかどうかは被告本人が決めること」と述べるにとどめた。【大平明日香、大島英吾】
 ◇目頭にハンカチ
 黒のスーツを着て、編んだ髪を左右にさげた窪田被告は無表情で一礼して入廷。被告人席で改めて土屋裁判長に深々と頭を下げてから着席した。
 「懲役12年に処する」。実刑判決が言い渡された瞬間もたじろがなかった。
 「自己の立場を維持することをもくろみ、犯行を計画・遂行し、独善的な動機に酌量の余地はない」。その後、判決理由が読み上げられると時折、ハンカチで目頭を押さえた。信者らがいる傍聴席を見ることもなく、うつむき加減で法廷を後にした。
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 ■判決要旨
 窪田康子被告の判決要旨は次の通り
 ◆犯罪事実
 07年9月24日夜、小諸市甲の宗教施設「大和紀元会館」内で、奥野さんの次女に暴行を加えた▽奥野元子さんに殴るけるなどして外傷性ショックで死亡させた▽信者が犯人であると知りながら奥野さんの家族4人に身代わりになるように依頼した。
 ◆争点に対する判断
 (1)暴行を指示したか
 幹部信者に避妊具付きのベストを製作させるなど準備を進めていた。各被害者を責めたて自らが率先して暴行して、集団暴行に発展させた。
 (2)犯人隠避を教唆したか
 被告人は紀元会内で強い影響力を有しており、「家でやったことにしな」と指示された奥野さんの夫らの供述は信用性が高い。
 ◆量刑理由
 許しを請う被害者に情け容赦ない暴行を加えたせい惨なもの。被告人は紀元会での自己の支配的立場を維持することを目的に、犯行を計画した。独善的な動機に酌量の余地はない。
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 ■ことば
 ◇紀元会集団暴行死亡事件
 70年設立の宗教法人。昨年9月24日、紀元会の信者が奥野元子さんの次女を暴行、その後呼び出した奥野さんを暴行、死なせた。翌日、傷害容疑で奥野さんの家族4人が逮捕されたが、教団内での集団暴行だったと発覚。県警は同年10月、紀元会本部を家宅捜査し、長野地検が26人を起訴。これまでに25人(窪田被告除く)に対し、1審で有罪判決が出た。

11月8日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081108-00000143-mailo-l20