記事登録
2008年11月08日(土) 17時28分

政府税調が再開 財政再建の旗振り役、存在感薄く産経新聞

 民間有識者で構成する政府税制調査会(首相の諮問機関)が今月14日から21年度税制改正の答申づくりに向けてようやく動き出す。今年の開催はわずか1回と異例の少なさで、再開は4カ月ぶり。原油価格の高騰や金融危機の拡大に伴う経済対策のメニューには多くの減税策が盛り込まれたが、政府税調は議論の“蚊帳の外”。おまけに消費税率の引き上げを政府・与党が検討課題に挙げたことで、財政再建の旗振り役を担った存在感さえ薄らいでいる。

 「11月ぐらいには(答申を)まとめておきたい」

 今年7月に開かれた政府税調後の会見で香西泰会長がこう語ってから4カ月。当時の福田康夫首相の意向を受け、例年よりも早めに開いたものの、開店休業の状態が続いていた。

 その間、夏から秋へと季節は移り、景気後退を背景に政府は総合経済対策と金融危機に対応した追加対策を相次いで決定。家計への緊急支援として浮上した所得税・個人住民税の定額減税は「生活支援定額給付金」へと衣替えして年度内の実施が決まった。麻生太郎首相は過去最大規模の住宅ローン減税を表明。政府税調が簡素化を促し続けてきた証券税制の軽減税率も早々と延長されることになったが、決定過程で口を挟む余地はなかった。

 政府・与党に指示が出た消費税を含めた税体系の抜本改革の道筋を記す「中期プログラム」の策定は経済財政諮問会議で議題に挙がる一方で、政府税調にはお呼びはなかった。

 「政治判断によるものは政府税調の論議になじまない」(財務省幹部)とされるが、元政府税調会長の加藤寛・嘉悦大学長は「経済対策には、短い時間でもいいから議論をやっておくべきだった。委員にいろいろな意見を出してもらえば議論のプロセスの透明性が高められる。政府税調が軽んじられているのではないか。道路特定財源の一般財源化に伴う税制議論はやるべきだ」と指摘する。

 もともと、毎年、財務省が予算原案とともに閣議に提出する税制改正大綱は、与党大綱に沿ったもので、政府税調の影響は小さい。それでも、格差問題から税のあり方に言及したり、減税措置が延長されがちな控除や租税特別措置に疑問を投げかけるなど民間有識者からの声は、議事録としてインターネットでも公開され、世の中の税制論議に幅を与えてきた。しかし、スピードを重んじる政治主導の強まりで、そんな“ご意見番”の居場所は狭まるばかりだ。政府税調は、昨年11月にまとめた答申で、消費税アップの重要性をすでに提言しており、今年は昨年答申をベースにした修正範囲に収まる可能性がある。

【関連記事】
政府税調、消費増税の具体案盛らず 香西会長「政治的な決断」
【官房長官会見】「調整始まった」 消費者庁の所管法制問題
町村官房長官「今の時点で評価できない」ミャンマー新憲法
2025年度 消費税6%増試算
【主張】社会保障国民会議 消費税率増の具体案示せ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081108-00000530-san-bus_all