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2008年11月08日(土) 08時05分

ネット選挙、本格到来 オバマ氏圧勝の武器産経新聞

 【ロサンゼルス=松尾理也】今回の米大統領選にインターネットが果たした役割の大きさが、米メディアで改めて指摘されている。1960年、接戦だったケネディ候補とニクソン候補がテレビ討論会によって勝敗を分けて以来の「テレビ時代」が終わり、米政治における「インターネット時代」が本格的に到来したとの分析もみられる。

 ≪支持者にメール≫

 選挙戦では当初から、インターネットが重要な役割を果たすとの見方が支配的だった。民主党予備選でオバマ氏と指名を争ったクリントン上院議員は、出馬表明を従来のようにメディアの前ではなく、インターネット上で行い、「さあ、チャット(ネット上で会話を交わすこと)しましょう」と呼びかけた。

 しかし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェースブック創業者の1人がシリコンバレーを去ってオバマ陣営に参加するなどネット社会最先端の人材が集まったこともあり、オバマ氏のネットの活用ぶりは他を圧していた印象が強い。

 結局はメディアの速報が勝ったものの、副大統領候補指名の第一報をメディアではなく、支持者一人一人の携帯メール(テキスト・メッセージ)で届けようとするなど、オバマ氏のネット重視は一貫していた。

 ≪ユーチューブ人気≫

 今回の選挙は、動画サイト「ユーチューブ」の登場後初めての大統領選でもあった。オバマ支持の若い女性が歌い踊る「オバマ・ガール」や、オバマ氏のキャッチフレーズをヒップホップのリズムに乗せた「イエス・ウィ・キャン」などさまざまなビデオが草の根的に披露され、人気を呼んだ。

 しかし、ネットと政治のかかわりを模索する試みはユーチューブにとどまらなかった。関心を集めている課題について専門家、そして一般人が議論する「OpposingViews(反対意見).com」や、専門家が選挙戦での主張が事実かどうかを吟味するとともに一般からの質問を受け付ける「factcheck(事実確認).org」など、さまざまなサイトが新しく登場した。

 人気テレビ番組「サタデーナイトライブ」でのペイリン共和党副大統領候補の物まねが大きな話題になったように、従来の主役、ネットワーク局も影響力を保った。しかし見方を変えれば、この物まねも、ネット経由での視聴者の存在が人気拡大につながったともいえる。

 ≪アクセス最高≫

 大統領選当日にはインターネットのニュースサイトが軒並み過去最高のアクセス数を記録した。CNN.comはこれまでの記録だった今年2月の大統領選予備選の集中日「スーパー・チューズデー」を約1億回上回る2億8000万アクセスを達成。ライバルのMSNBC.comは2004年大統領選投開票日のほぼ倍にあたる2億5000万アクセスを達成した。

 04年の大統領選で民主党のディーン候補の参謀を務め、インターネット選挙の草分けとされるジョー・トリッピ氏は米メディアに対し、「ケネディ大統領から始まったテレビ選挙時代が終わり、インターネット選挙時代が始まった」と指摘。「オバマ氏は、ネット経由での直接的な支持者との結びつきを手にした。新政権では議会に比べて大統領の力は相対的に強まるのではないか」と予測している。

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