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2008年11月07日(金) 01時06分

【政論】退職金返還求めるならなぜ懲戒免職にしなかったのか産経新聞

 浜田靖一防衛相は、更迭された田母神俊雄前航空幕僚長に退職金の自主返納を求める考えを示したが、退職する公務員が退職金を受け取れないのは懲戒免職処分を受けた場合だけだ。田母神氏は懲戒処分の「審理」に応じる意向を示していたのに、防衛省は「時間がかかる」として手続きに入らなかった。今さら退職金の返納を求めるのは筋違いといえる。

 防衛省によると、懲戒手続きでは、対象者の意見を聴く審理がまず開かれる。これに対し、田母神氏は「懲戒処分を行うのなら審理を辞退する意思はない」と、手続きに積極的に協力する意向を示していた。

 ところが、防衛省は、こうした審理には時間がかかり、6カ月が限界の定年延長では結論が出ないまま結局退職を迎えてしまうので、懲戒手続きの開始を断念したと説明している。だが、手続きに入ったところで、事前に防衛省に届け出ずに論文を公表した行為だけで懲戒免職を適用した例はない。そもそも懲戒免職処分に問うこと自体が不可能だったのが実情だ。

 田母神氏が論文に公表した思想信条が政府見解と異なり問題なのだというのなら、責任はむしろ、そうした人物を航空自衛隊トップに選んだ政府の側にこそある。

 結局は、国会で論文問題の追及をかわすために、「臭い物にフタ」で処分を急いだだけとみられても仕方がない。正規の手続きすら踏まなかった防衛省が、それでも退職金だけは返してくれというのはあまりにも虫が良すぎる話だろう。(赤地真志帆)

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