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2008年11月07日(金) 00時42分

公教育を問う 学校支援、熱意どう生かすか産経新聞

 入試で服装や態度が悪かった受験生を不合格にしていた神奈川県平塚市の県立立神田高校。県教育委員会は先月28日、記者会見して問題を公表、渕野辰雄前校長を事実上更迭した。

 この問題は、公表1週間前の先月21日、県教育委員会臨時会で教育委員に知らされていた。

 県教委によると、来春の県立高再編に向けた人事異動案の中に神田高校長人事があり、委員は事務局から問題の説明を受けた上で、原案通り議決。続いて開かれた非公開の協議会では「校長の気持ちは分かる」という同情論が委員から出たが、「あらかじめ公表した基準から外れていることはよくない」が大勢の見方で、更迭に異論は出なかったという。

 だが公表後、校長を擁護する意見は県教委にも多く寄せられ、同校保護者説明会では異動撤回を求める親もいた。「あの先生だからここまでいい学校になった」。保護者の一人はこう語ったという。

 校長更迭は学校現場の実情や保護者らの要望と隔たってみえる。県教委は校長を守れなかったのか。

 元東京都国立市教育長の石井昌浩氏は「基準になかったからという形式的な議論では学校の現実問題に対してなんら解決策にならない」と話す。

 石井氏は神田高校のような問題を抱える学校の現状について「最初から勉強する気のない生徒を入れ、結果として学校が荒れるか中退するかのどちらかになっている」と指摘、「この矛盾の受け皿となっている現場を見ずに『学ぶ権利』という建前で県教委が校長の熱意を支えなかったのが最大の問題点だ」と訴える。

 社会の変化や保護者らからの要望が多様化するなかで教育委員会は学校現場をどう支援していくか。さまざまな試みが各地で行われている。

 埼玉県教委の高橋史朗委員長は、同県の取り組み例として、警察行政にかかわる県公安委員会と県教委との定期的会合を挙げる。

 「従来、警察と教育がつながることはタブー。しかし、学校でのネットいじめへの対応も、警察と連携しなければうまくいかないのが現実だ」と高橋氏。

 東京都港区では、学校が抱える法律トラブルを校長が弁護士に相談できる「学校法律相談制度」を昨年から始めた。初年度は13件の相談があり、内容はほとんどが保護者同士、子供同士の問題だったが、学校が板挟みになってトラブルとなっていた。同区教委は「相談相手がいることで、トラブル時でも教員の心の支えになっている」と話す。

 教育委員会改革へ、教委の役割や責任を明確化した「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)が今年4月に改正・施行された。教育委員への保護者選任を義務化▽教委が必ず責任を負う事務として職員人事、活動の点検・評価など6項目を明確化−などが盛り込まれた。

 「名誉職」などと揶揄(やゆ)される教育委員が、レイマンコントロール(一般市民による管理・監督)を現実に行うための改革が法的にも始まった矢先、発覚したのが大分県の教員採用汚職事件だった。

 前出の高橋氏は「教育委員の今の実態は“外部パート職員”で、フルタイムの事務局をリードするなんてできない」とした上で、「月に数回の会合、午前中だけの審議時間など、慣例を根本的に見直す必要がある。大分の事件があってなお改善が進まないなら、教委の存在意義はない」と言い切り、委員に危機意識の共有を求めている。

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