記事登録
2008年11月07日(金) 21時35分

<麻生首相>閣内の不一致露呈 定額給付金、道路財源移譲毎日新聞

 麻生太郎首相の指示があいまいだったり、すぐに変更されるため、与党・政府内で混乱が生じている。総額2兆円の定額給付金では「全所帯支給」と表明後に方針を変更し、いまだに正式な決定に至っていない。道路特定財源のうち1兆円を地方に移譲する、との指示も、支給額の解釈をめぐって閣内の不一致が露呈した。あまりの混乱ぶりに、与党や関係省庁からは首相の統治能力を疑問視する声も出始めた。

 ◇相次ぐ政府批判

 「最初の首相発言(通り)、全所帯で良かったのではないか」。野田聖子消費者行政担当相は7日の閣議後会見で、定額給付金について、政府・与党が検討する所得制限に否定的な見方を示した。所得制限には、与謝野馨経済財政担当相が必要との考えを示す一方で、中川昭一財務・金融担当相が年度内の支給を優先して制限に慎重な意見を表明しており、政府方針がなかなか定まらない。

 政府内の混乱に自民党はいら立ちを募らせる。約1時間に及んだ同日の党役員連絡会では政府批判が相次ぎ、「不況時に所得制限なんて必要ない。全所帯に配って消費拡大につなげるべきだ」との意見も出た。

 細田博之幹事長は会見で「政府・与党の役職者が自分の考えを表明すると、混乱する」と自制を呼び掛けた。だが衆院選が先送りされたことで、「対野党」で団結してきた自民党の空気は一変し、早期解散論を主導した細田氏の発言力も低下して議論のまとめ役になり切れていない。

 役連後の総務会も1時間弱続き、党執行部の一人でもある笹川尭総務会長が「定額減税は国民生活を支援するもので、所得の高い人までもらったら(国民が)感謝しなくなる」と持論をぶった。

 閣僚経験者からも「所得制限は基本的な問題で、政策として打ち出す前に詰めないといけない」と、政府への苦言が出た。地方農政局など国の出先機関の原則廃止を指示した首相方針にも「(党内の)根回しはできているのか」と疑問が示され、政権批判がくすぶり始めている。【山田夢留、近藤大介】

 ◇官邸「つなぎ役不在」

 「(定額給付金で閣内不一致との見方は)全然違う。方向としては、迅速性と公平性がきちんとしていればいい」。首相は7日夜、混乱はないとの見方を強調した。首相官邸で記者団に語った。

 政府・与党内が混乱するのは、首相の指示が(1)方針が変わる(2)内容があいまい−−であるためだ。

 定額給付金は衆院選の選挙公約的な色彩が濃く、首相が追加策を発表した10月30日時点で詳細が詰められていなかった。とはいえ、首相が「全世帯給付」を明言した翌31日に、与謝野氏が所得制限を主張。首相も4日に「豊かな皆さんに出す必要はない」と軌道修正し、与謝野氏の独断専行と首相の指導力低下を印象付けた。地方分権に絡む国の出先機関の整理も「原則廃止」か「統廃合」かで混乱し、首相は「統廃合」と火消しを迫られた。

 道路特定財源の1兆円は首相指示があいまいで、鳩山邦夫総務相と金子一義国土交通相の間で見解が分かれたまま。だが調整に向けた動きは見られず、首相の掛け声だけが宙に浮いた状態だ。

 首相周辺は「経営者の経験があり、大方針を素早く決定するのが麻生首相の真骨頂。具体化は事務方の仕事」と擁護する。官邸関係者も「首相の指示が大ざっぱでも、意味するところを伝える人がいれば混乱しない。官邸、与党、霞が関(省庁)は綿密に連携すべきだが、官邸につなぎ役がいない。安倍晋三首相時の官邸と似ている」と語る。与党との調整は官房長官、霞が関は省庁出身の官房副長官があたるが、それが機能していないとの指摘だ。だが官房長官らを任命したのは首相で、結局、トップである首相の責任だ。

 自民党内からは「物事を決める原理原則がぶれている。統治能力が疑われる」との指摘も出ている。当の首相は7日夜、リーダーシップを疑問視する声に「全然関係ないと思います」と自信たっぷりに語り、周辺の空気は伝わっていないようだ。【高塚保】

【関連ニュース】
麻生首相:オバマ氏に好印象「丁寧に言葉選んでいる」
民主党:鳩山幹事長が首相発言の「ぶれ」批判
麻生首相:文民統制に「全力」 田母神論文
麻生首相:オバマ次期大統領に祝電 APEC前後に会談
麻生首相:夜の会合…ホテルがだめなら公邸で

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081107-00000126-mai-pol