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2008年11月07日(金) 22時33分

非正社員が約4割 厚労相の就業形態調査、厳しい労働環境実証産経新聞

 企業に勤める労働者の中で、パートや派遣といった「非正社員」が4割近くを占めるまでに増加する一方で、その3割が正社員としての雇用を望んでいることが7日、厚生労働省の調査結果で分かった。企業が賃金抑制や、不況時の解雇を前提に非正社員を雇っていることも判明。景気減速のなかで現実となっている、非正社員を取り巻く厳しい労働環境が統計上で裏付けられた格好だ。

 調査は多様化する就業形態の実態をつかむ目的で、およそ4年間隔で実施。5人以上を雇用する1万791社と、労働者2万8783人から回答を得た。調査対象は平成19年10月1日現在の状況で、世界的な金融危機が深刻な状態になる前にあたる。

 労働者のうち、非正社員の割合は37・8%で前回15年時よりも3・2ポイントの増、11年時に比べると10・3ポイントも増えた。

 非正社員を雇う理由(複数回答)では「賃金節約のため」が40・8%で最も多かった。「専門的業務に対応するため」が24・3%に上る一方、不況時の解雇を前提にした「景気変動に応じて雇用量を調整するため」という回答も21・1%あった。

 実際、消費の冷え込みが現実味を帯びてきた今夏以降、各企業では非正社員を“雇用の調整弁”として削減する動きが進んでいる。特に自動車業界ではトヨタが約2000人の期間従業員を、日産も派遣社員1000人の削減を検討するなど非正社員を中心にした大規模なリストラが進む。

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 また、労働者側に非正社員を選んだ理由(複数回答)をたずねたところ、「都合のよい時間に働けるから」が42・0%、「家計の補助」が34・8%と多数を占めた。「正社員として働ける会社がなかったから」も18・9%いた。

 厚労省では「望んで非正社員になる人もいるが、やむを得ずという人もいるなど、多様な理由によって非正社員層が構成されている」と分析している。

 収入(19年9月)をみると、正社員の39・0%が20〜30万円と回答した。非正社員では10万円未満が40・5%と最多を占め、収入の格差がはっきりと浮かび上がった。

 収入が低いにもかかわらず、派遣の70・5%、契約の68・6%が、生活を成り立たせる主収入を「自分の収入」と答えた。

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 調査結果からは、正社員と非正社員での職場満足度に差があることも分かった。正社員の満足度は、「雇用の安定性」や「仕事の内容・やりがい」「賃金」「福利厚生」で非正社員を上回った。逆に非正社員が満足度で正社員を上回ったのは、「労働時間など労働条件」だけだった。

 職場全体に関する満足度を総合的に聞いたところ、正社員の45・2%が満足と回答したのに対し、非正社員では33・5%にとどまった。

 低い満足度を反映してか非正社員では、正社員への登用を望む人も少なくない。今後の働き方に対する希望を非正社員に質問した項目では、30・6%が「他の就業形態に変わりたい」と希望。とりわけ20〜24歳で65・9%、25〜29歳で57・9%が「他の就業形態に変わりたい」と回答。そのうち9割は、正社員への登用を望んでいた。

 非正社員の雇用対策の一環として政府は4日、とりわけ雇用の不安定さが指摘されている「日雇い派遣」の原則禁止を柱にした労働者派遣法の改正案を国会に提出した。しかし、混沌(こんとん)とする国会状況に、審議入りのメドはたっていない。

 さらに、改正案が日雇い派遣の全面禁止に踏み込んでいないことから、「ワーキングプアを解消し、派遣労働者の雇用と生活を安定させるものとはなっていない」(日弁連会長声明)といった批判も出ており、非正社員にとっては厳しい労働環境が続きそうだ。

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