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2008年11月07日(金) 03時05分

「売上金譲渡受けた」通知で横取り回収…商工ローン「SFCG」読売新聞

 商工ローン大手「SFCG」(旧・商工ファンド)グループが、融資先の中小企業からの返済が滞っていないのに、その取引先に対して「売上金(債権)の譲渡を受けた」とする通知書を送り付け、融資先に支払われるはずの代金をSFCGに払うよう求めていることが分かった。

 この問題に取り組む全国弁護団は「違法な回収だ」として、債権譲渡の無効を求める仮処分の申し立てや損害賠償請求訴訟を裁判所に起こした。「売り上げの横取り」とも言うべき回収手法だとして、弁護団は刑事告発も検討している。

 弁護団によると、こうした通知は東京都、岩手県、北海道で確認されている。仮処分の申立書や訴状などによると、SFCGから融資を受けている岩手県内の食品販売会社は今年3月、SFCG側の要求に応じ、返済が遅れた場合などには、売上金をSFCG側に譲渡する内容の債権譲渡通知書に署名、押印した。返済遅れのほか、借り手や連帯保証人が破産したり、追加担保の請求に応じられなかったりした場合などにも効力が生じる条件だった。

 食品販売会社はその後、毎月10万円程度の返済を遅れずに続けたが、10月上旬、取引先に突然、SFCG側から債権譲渡通知書が送付されたという。

 連帯保証人となっている会社社長の親族には8月、SFCG側から「担保が不足しているため一括返済してほしい」という文書が届いていたが、食品販売会社に追加担保の請求はなかった。このため弁護団は「借り手本人に連絡がなく、債権譲渡が認められるケースに当たらない」としている。

 食品販売会社は「10月分の売上金約62万円が支払われなくなる」として、盛岡地裁に今月5日、債権譲渡の無効を求める仮処分を申し立てた。また、これに先立ちSFCG側への損害賠償請求訴訟も起こした。

 弁護団は北海道のケースでも、損害賠償請求訴訟を起こした。さらに、業務の平穏を害する取り立てを禁じた貸金業法違反容疑などでSFCG側を刑事告発することも検討している。

 SFCG法務室は「理由もなく債権譲渡通知書を送ることは考えられない。担保不足が生じた場合、連帯保証人に通知していれば足り、違法性はない」と話す。

 SFCGを巡っては、約定通り返済しているのに元利金の一括返済を求められたとして借り手など75人が10月末、損害賠償を求めて全国7地裁に提訴した。「日栄・商工ファンド対策全国弁護団」の新里宏二副団長は「金融不安の広がりで回収を急いでいるとみられるが、取引先の信用を失墜させる行為は一括返済請求以上に悪質だ」と指摘する。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081107-OYT1T00021.htm