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2008年11月06日(木) 00時00分

「アンドロイド」で変わる欧米の携帯端末の潮流読売新聞

 米Googleと大手携帯事業者T−Mobileがニューヨークで9月23日、携帯電話用OS「Android」を搭載した携帯電話機「G1」を発表した。米国内では10月中に179ドルで発売、クリスマス商戦が始まる11月にはイギリスでも販売を開始、来年初頭からは欧州全土で展開するが、日本での販売は未定だ。

争奪戦は三つ巴

米国Tモバイルのサイトでは発表会見の模様をすべて動画配信している

 携帯電話で世界シェアトップのノキアもタッチパネル式の携帯電話をG1発表直後に発表。これにアップルのiPhone、そしてこのグーグルのG1と、世界市場ではスマートフォンの三つ巴戦争の幕が切って落とされたことになる。グーグルが自画自賛するG1最大の特徴は、どこでもインターネットにアクセスして様々な情報を得ることができるというその究極のモバイル性だ。

 ニューヨークでの発表記者会見では、グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ氏がローラーブレードを履いて登場し、「肌身離さない携帯電話。でも、いくら小型になったとはいえノートパソコンではそうもいきません。特にこうしてローラーブレードで移動している場合はね。しかし、このG1さえあればノートパソコンを持ち歩いているのと同じ利便性を手に入れることができるのです」と静かにアピールした。

 スマートフォンとして電話、メール、チャット、ウェブサーフなどができるのは当たり前だが、話題のストリートビューなどを始め「2、3年前のノートパソコンと同じようなことができてしまう」(ペイジ氏)。音楽好きにとっての魅力は、MP3に対応するとともにiTunesも利用可能ということ。英「ガーディアン」紙によると英国で発売される際には2GBのメモリー搭載可能となり数100曲を持ち歩ける。

 そして、「アンドロイド」最大の特徴として、グーグルが開設したソフトの配信サービス「Marketplace(市場)」の存在がある。ユーザーはカレンダーからバーコードリーダーなどまで、好みのウィジェット(*)を有償無償でダウンロード、自分の携帯電話を世界で1台だけの機種にカスタマイズできるのだ。一方、この“市場”では、世界中の携帯ソフト開発者が自由にアンドロイド対応ソフトを“展示即売”できる。

 つまり、ここはユーザーとソフト開発者が自由にソフトを売買できる、まさに“マーケット”なのだ。そして、携帯端末用OSであるアンドロイドそれ自体も携帯端末メーカーに無償提供されるので、端末の高機能化・カスタマイズ化が世界的規模で際限なく進むと予想される。

インテルも新兵器を投入

 グーグルの目論見は一目瞭然だ。この四半世紀、パソコン業界が経験してきた爆発的な発展を、携帯端末の分野でも起爆させたい、ということだ。そのためには、携帯端末によるネット利用は不可欠で、ネット広告収入が大黒柱であるグーグルにとって、アンドロイドを巡る今回の挑戦は、これまでのビジネスモデルの延長線上にあるともいえる。

 「これからの時代は“モバイルインターネット”です。このG1はその時代に向けた記念碑的存在になる」(Tモバイル、ブロッドマン取締役)という世界的な流れに、わが国でもここへきて、スマートフォンの発売が相次いでいる。また、インテルは小型低価格ノートパソコン搭載で話題の「Atom」に続き、より小型で高機能なマイクロプロッセッサーを来年にも発売予定だ。「開発に当たってはスマートフォン搭載を想定している」と狙いはそのものズバリ。

 グーグルは、検索エンジンとしてパソコン上のウェブを制覇したのと同様のことを、携帯端末の世界でも目指し、世界の潮流もその渦に巻き込まれそうな気配だ。(編集部・飯村毅/2008年10月24日発売「YOMIURI PC」2008年12月号から)

* デスクトップで動く小型のソフト。カレンダー、天気予報、検索ボックスなどがある。

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20081106nt07.htm