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2008年11月06日(木) 00時57分

【米大統領選】ネット献金集め…新しい勝利の方程式を確立 産経新聞

 【ワシントン=有元隆志】インターネットによる小口献金を大量に集め、その豊富な資金をもとに、共和党の強い「赤い州」まで戦線を広げ勝利した民主党オバマ上院議員の選挙の手法は、地盤や出馬前の資金力がなくても大統領に当選できる「新しい勝利の方程式」を確立した。米大統領選史上画期的な出来事といえる。

 オバマ氏は当選演説で、「君は陰のヒーローだ。米国史上最もすばらしい選挙態勢をつくりあげてくれた」と選対責任者デービッド・プラフ氏をたたえた。

 プラフ氏は選挙直前のFOXテレビ番組で、選挙戦を振り返り、「われわれの戦略目標は、戦線を大きくすることだった」と説明した。少数派の黒人候補であるオバマ氏は民主党予備選で、白人労働者層の多いペンシルベニア州やオハイオ州で敗北した。本選挙で仮に両州で負けても最終的には選挙人の過半数270人を超えるために、「いくつも勝利のための手段を持っておく」(プラフ氏)必要があった。

 プラフ氏の戦線拡大戦略を可能にしたのは、資金力と組織力だった。民主党には先駆者がいた。2004年の大統領選で、ハワード・ディーン候補(現党全国委員長)はインターネットによる小口献金を集めるとともに、共和党の地盤まで運動の幅を広げる「50州戦略」を提唱した。ディーン氏は失言もあり、予備選段階で脱落したが、オバマ氏は今回、ディーン氏の構想を実現したといえる。

 オバマ氏は当初100ドル(約1万円)前後の小口献金に頼っていたが、予備選で勝利を重ねるにつれ大口献金も増えた。10月末までに集めた資金約6億4000万ドル(約640億円)は、04年の大統領選でブッシュ大統領とケリー氏の資金の合計とほぼ同じで、共和党候補マケイン上院議員の約3億6000万ドル(約360億円)を圧倒した。

 コルビー大(メーン州)のアンソニー・コラド教授は、潤沢な資金によって、オバマ氏は(1)民主党予備選段階から多くの州で選挙事務所を設置し、運動員を配置できた(2)予備選終了後も事務所を継続して維持する資金的余裕があったため、選挙人登録の推進、期日前投票の働きかけなどの運動を積極的にできた(3)限られた資金の割り振りに悩む必要がなく、選挙戦からの撤退を迫られる州がほとんどなかった−と分析する。

 激戦州のフロリダ、ペンシルベニア州など6州で、オバマ氏は約350カ所で事務所を構えたのに対し、マケイン氏は共和党州委員会とあわせても約180カ所にすぎず、組織力で大きな差が出た。

 戦線拡大の結果、終盤になって、共和党の強いノースカロライナ州、インディアナ州などでも激戦となったため、マケイン氏は従来の激戦州であるフロリダ州などでの戦いに集中できなくなった。ケリー氏が04年の選挙で獲得した州でオバマ氏が落とした州はなく、まさに完勝ともいっていい結果となった。

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