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2008年11月05日(水) 02時13分

<愛知裏金>公費で購入に疑問も 公と民、常識に落差毎日新聞

 葬儀用の黒色ネクタイ、数珠、折りたたみ自転車……。愛知県が、06年度までの5年間で農林水産部と建設部の不適切な処理と指摘された約3億1000万円のうち約1億7000万円を使って購入した事務用品は、公費での購入に疑問符の付く物もあった。しかし、県は「正規の手続きを経れば購入していい物品」と語り、事態を深刻に受け止める意識は感じられなかった。浮き彫りになったのは「公」と「民」の常識の落差だ。【月足寛樹、丸山進】

 ■必要のない物品

 海部建設事務所は、発注した物品と別の物品を納入する「差し替え」の手口で、03年度だけでプリンター19台を購入した。杉山幸夫次長によると、7台は現在も使用中だが、3台は廃棄し、9台は倉庫で眠っている。

 職員15人の総務課に5台のプリンターが配備され、各課も平均2〜3台置かれている。杉山次長は「必要のないプリンターでは」との問いに「各課1〜2台で不便はないかもしれない」などと安易な購入を認めた。

 また、新城設楽建設事務所は物品を架空発注し、代金を業者に保管させる「預け」の手口で、06年度に5600冊のファイルを購入した。同事務所は職員定数が104人で、太田秀雄次長は「ファイルは1人年間30冊は使うから多くはない」と語る。しかし、他の年度では多い年で約200冊しか購入していない。裏金のため、厳格な審査もなく、物品を購入している実態が浮かぶ。

 ■関係のない物品

 公務との関連を疑わせる物品もあった。冷蔵庫や電子レンジの購入について農水部の永田清部長は「冷蔵庫は来客に冷たい飲み物を出すために使っていた」「電子レンジは時間外勤務で食べ物を温めるために使った」と“公務の一環”を強調した。

 一方、東三河農林水産事務所などで購入していた香典袋や黒ネクタイ、数珠などは「業界団体の長が亡くなった場合など、自宅に戻ったりするより備え付けがあった方が便利」と主張する。私費で支出すべきだとの指摘に永田部長は、「解釈の違いです」と役所の論理を展開した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081105-00000008-mai-soci