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2008年11月05日(水) 08時00分

小室容疑者逮捕 5億円詐取認める 大物との人脈誇示産経新聞

 ■「小室サウンド」権利自体を悪用

 兵庫県内に住む個人投資家の男性(48)に音楽著作権の譲渡を持ちかけ5億円をだまし取ったとして、大阪地検特捜部は4日、詐欺容疑で音楽プロデューサー、小室哲哉容疑者(49)ら3人を逮捕した。著作権を所有していない事実を隠す工作は小室容疑者が主導。「逃げも隠れもしない」と投資家を説得していた。音楽出版社に譲渡していた著作権の一部を自らの関連会社に二重譲渡していたことも判明。特捜部は投資家に著作権を譲る意思がなかったとみて、詐欺の全容解明を進める。

  ■写真で見る■90年代に大活躍した小室ファミリー

 調べに対し、小室容疑者は「刑事責任を潔くとるつもり。被害者に謝罪したい」と容疑を認めている。犯行当時、借金は十数億円あったとみられ、だまし取った5億円はすべて借金の返済に充てたという。

 ほかに逮捕されたのは、イベント企画会社「トライバルキックス」(東京)社長、平根昭彦容疑者(45)と同監査役、木村隆容疑者(56)。特捜部は、東京都港区の小室容疑者の自宅マンションなど関連先数カ所を家宅捜索した。

 調べによると、小室容疑者らは平成18年7月30日、東京都内のホテルで、作詞・作曲した楽曲806曲の著作権が自身にあるかのように装って投資家に10億円で譲渡する仮契約を結んだ上、前払い金5億円をだまし取った疑い。

 小室容疑者は投資家との交渉前にほかの2容疑者に「金を引き出すため、著作権を所有していない事実は隠しておこう」と発案。交渉では「これでも名の知れた男。逃げも隠れもしない」と投資家を説得し、自らが作った曲を「世界で一つの曲」とCDにしてプレゼントし、信用させた。

 著作権はすでに音楽出版社「エイベックス・エンタテインメント」などに譲渡され、小室容疑者に著作権譲渡の権限はなかった。関係者によると、小室容疑者は約300曲について別の音楽出版社など2社に二重譲渡していた。

                   ◇

 「小室ファミリー」と呼ばれた一大グループを率いて日本の音楽シーンを席巻したヒットメーカーに、かつての栄光の面影はなかった。4日、5億円の詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕された音楽プロデューサー、小室哲哉容疑者(49)。メディア王や歴代首相などとの人脈を誇示して信用させ、「小室サウンド」の権利自体を悪用した。かつての“セレブ生活”から一転、多額の借金返済に追われ、なりふり構わず金策に走った姿が浮かび上がる。

 小室容疑者は昭和59年に「TMネットワーク」でデビュー。平成に入ってからはtrf、安室奈美恵さんらのプロデュースを手がけ、音楽プロデューサーとしての地位を確立したことは今も記憶に新しい。

 しかし、その後は人気に陰りが出始め、13年に元妻と結婚したが翌年離婚。香港で立ち上げた音楽関連事業も失敗し、多額の借金を抱えた。今回の事件の背景には、複数の金銭トラブルがあったとみられる。

 「メディア王・マードック氏と会社をつくる」

 「(会社設立は)歴代首相にも話している」

 小室容疑者が、5億円をだまし取ったとされる兵庫県内の個人投資家(48)に話した言葉だ。

 小室容疑者は平成18年7月30日、東京都内のホテルで投資家と面会。米国や英国など世界のメディアを牛耳ってきたルパート・マードック氏の名前を挙げ、音楽配信事業の会社を設立する話をした。

 小室容疑者とマードック氏は90年代後半に香港で合弁会社を設立した関係があったが、18年以降、実際に配信事業の会社は設立されていないという。

 さらに小室容疑者は投資家に「歴代首相とも面談した」「鉄道会社の元オーナーには数百億円単位のオファーを受けている」などと、さかんに音楽配信事業の会社への融資を呼びかけた。

 一方、小室容疑者は、元ライブドア社長の堀江貴文被告(36)=旧証券取引法違反罪で有罪判決、上告=に対しても共同事業を持ち掛けていた。

 17年11月ごろ、東京・西麻布の自宅で堀江被告と会い、「米国の音楽版権を中国に向けて着うた配信できる」などと約2時間、熱弁をふるったという。堀江被告はその直後の18年1月、東京地検特捜部に逮捕されたため、共同事業は実現しなかった。

 小室容疑者のブログの書き込みは、今年6月15日を最後に途絶えていた。

 「やらなければならないことはやはり確実にやらないとだめなぁんですね、この時代。僕でいえば、作曲、しかも、ヒット曲!をだすとかね」

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