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2008年11月05日(水) 08時03分

【Re:社会部】指差喚呼産経新聞

 「戸閉めよし。出発進行。(速度)制限35!」

 電車の運転席から聞こえてくる運転士の声。すべての扉が閉まり、車掌から発車合図を受けると、運転士は目の前の信号の色を指さして声に出します。

 「進行」は青信号。万一の見落としを避けるために繰り返される確認動作「指差喚呼(しさかんこ)」です。

 ハインリッヒの法則によれば、1つの重大事故の背後に29の軽微な事故があり、背景に300のヒヤリやハットさせられるニアミスが潜んでいるといいます。基本動作を怠らず、ニアミスを少しでも減らしていくことが、重大事故の芽を摘むことになります。

 この基本動作の大切さを身をもって実感したのが、群馬県のローカル線上信電鉄です。平成17年から19年にかけて、脱線事故が3度も発生。うち2件は、係員がポイント切り替え時の確認を怠り、電車通過中に切り替え操作をしたために発生した人為的ミスでした。

 昭和59年には赤信号見落としによる正面衝突事故もあっただけに、同社の幹部は「形にとらわれていた基本動作の意味を一から見直したい」と反省しました。

 人命をあずかり、安全輸送に徹する鉄道員。その自覚を改めて確認する作業でもあるのだと思いました。(樹)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081105-00000090-san-soci