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2008年11月05日(水) 00時09分

<国民会議>増税地ならし先行 改革全体像示せず毎日新聞

 社会保障国民会議は消費税を含めた増税への地ならし役が狙いだった。最終報告に「必要な税率」が盛り込まれたのも、そのためだ。だが、今や限られた税財源をどの分野に重点投入するかを決め、社会保障制度の全体像を描かなければならない時期に来ている。増税に見合う青写真こそ求められているのに、示されたのは抽象的な「社会保障機能の強化」程度で、報告書は肩すかしだった。

 最終報告に、具体的な税率を書き込むことは、財務、厚生労働両省の悲願。麻生太郎首相が3年後の消費税引き上げを表明し、税制抜本改革に関する中期プログラム策定に着手したタイミングと重なり、必要税率の明記にこぎつけた。

 しかし、最終報告書は肝心の社会保障改革の方向性を明示できたとは言えない。負担増を強いられる国民にとって、「何を選択すればどんな見返りがあるのか」という点こそ大事なのに、さっぱり伝わってこないからだ。

 基礎年金の財源は今の保険料主体を続けるのか、全額税で賄う税方式か−−。この古い課題の答えも出せなかった。年金記録漏れ問題がネックになり、「制度の抜本改革による信頼回復」を唱える税方式論者を説得できなかったためだ。

 報告書の言う6%の消費税増税は、「現行年金制度+医療改革」の場合の試算で、4%は医療改革分。一方、「税方式+医療改革」なら13%。その場合、消費税は今の5%と合わせ18%になる。

 「18%など非現実的。税方式にすれば医療に回す4%分は確保できないことを示唆した」(厚労省幹部)と言うが、役人が勝手な思惑で政策を進める時代ではとうにない。

 その医療改革も「あるべき姿」を描いたとの自負が聞かれるが、入院日数短縮と在宅医療の強化という厚労省の旧来の主張を並べたに過ぎない。最終報告書では「財源配分の見直し、診療・介護報酬体系の検討が必要」と指摘しながら、試算にそうした改革を反映させることもなかった。

 改革の具体的なメニューが見たい。「金が必要だから出せ」では、国民の理解は得られない。【吉田啓志】

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