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2008年11月05日(水) 22時28分

<米大統領選>巨額赤字で景気対策に制約、オバマ氏早々試練毎日新聞

 米大統領選に勝利した民主党 オバマ上院議員にとって、深刻化した金融危機と実体経済の悪化というブッシュ政権の「負の遺産」にどう立ち向かうかが当面の課題になる。世界不況が現実味を増す中、危機の震源地・米国の経済政策のかじ取りが世界経済も左右するだけに、オバマ氏はさっそく試練を迎えそうだ。

 選挙戦の流れは、証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻(はたん)した9月15日を境に大きく変わった。共和党のマケイン上院議員が「米国経済の基盤は強固だ」と演説、不評を買う一方、オバマ氏は金融危機収束に全力を挙げる考えを表明。ガソリン高騰に合わせる形で中低所得層に焦点を絞った政策を打ち出した。これで、伸び悩んでいたオバマ氏の支持率も急上昇、同17日には45.7%でマケイン氏に並び、見る見るマケイン氏を引き離した。

 4日の出口調査でも、投票で最も重視した争点を「経済政策」と答えた人がトップの63%で、このうち54%がオバマ氏に投票した。金融危機を引き金に雇用、医療保険制度など生活基盤への不安がオバマ氏の勝利を呼び込んだといえる。

 ただ、大勝の要因になった金融危機は、09年1月の大統領就任と同時にオバマ氏に重くのしかかる。米国経済のけん引役である個人消費は金融危機で冷え込み、7〜9月期の米実質成長率は0.3%減とマイナス成長に転落。市場では「09年1〜3月まで3四半期のマイナス成長が続く」との予測が広がる。

 これまでは、経済の閉塞(へいそく)感がオバマ氏による現状打破への期待を高めてきたが、大統領として金融危機や景気後退への有効策を打ち出せなければ、失望感は計り知れないほど大きくなる。

 米議会では、民主党を中心に公共事業など総額1500億ドル(約15兆円)規模の経済対策が浮上、オバマ氏も選挙戦で「低・中所得層を中心に勤労世帯の95%を減税する」などと追加対策に前向きな発言を繰り返してきた。4日に米イリノイ州シカゴで行った勝利宣言でも、「米国は1世紀に1度の最悪の金融危機に直面している」と指摘し、経済再生に全力を挙げる考えを表明した。

 ただ、今春の所得税還付を柱とした経済対策や10月に決定した7000億ドル(約70兆円)の公的資金を投入する金融安定化策、さらに景気悪化による税収減もあって、08会計年度(07年10月〜08年9月)の財政赤字は過去最大の4550億ドルに拡大。09年度の赤字は「1兆ドルを上回る」との観測も出ており、「大勝したオバマ氏といえども大盤振る舞いできるか」(双日総合研究所の吉崎達彦氏)と疑問視する声もある。

 財政赤字の膨張はドル暴落の危険もはらみ、小康状態を保っている金融危機が再び猛威を振るう恐れもある。大和総研の岡野進氏は「民主党が上下両院選でも勝利し、オバマ氏が大胆な政策を打ち出しやすい環境ができたことは世界経済にもプラスだが、景気はかなり厳しく、軌道に戻すのは簡単ではない」と警告している。【坂井隆之、ワシントン斉藤信宏】

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