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2008年11月05日(水) 12時03分

中国も小室ショック、中国ではよくあることなのにサーチナ

 「日本音楽教父(ゴッドファーザー)、小室哲哉、5億円の詐欺で逮捕される」……。90年代に音楽界を席巻したスーパースター、小室哲哉容疑者逮捕のニュースは即日、中国の国営新華社通信も中国新聞社も写真付きで大量報道した。さすが世界のKTである。写真は、新疆ウイグル自治区で海賊版CD、DVDなどを摘発、処分するようす。

関連写真:そのほかの小室哲哉に関する写真

 彼はJポップスの一時代を築いたカリスマミュージシャンとして中国のテレビにもしばしば登場していた。1997年の日中国交正常化20周年記念ライブツアー「小室家族独唱会」を行い、98年には香港に進出、音楽コンテンツ会社ロジャムを設立し、上海に自らプロデュースするディスコ、クラブ・ロジャムをオープンさせた(今年1月営業停止)。

 「“中国版安室奈美恵”をつくる」と語って、中国人気女優・陳好さんの音楽プロデュース担当者の一人として中国のテレビや新聞で大きく取りあげられたのは2005年6月のこと。中国の若者層に少なからず存在するJポップファン、日本ポップカルチャー信仰者は、小室哲哉と彼の作り上げたアーチストと音楽が育てたといっていい。

 その凋落ぶりに、北京の友人たちは同情を禁じえない。いわく「中国ではよくある話。その程度で警察につかまるの?」。音楽、映画、出版などの業界では、企画のカラ売りや二重契約、他人の著作権をあたかも自分のものと偽って第三者に売ったりすることなど、確かによくある話。業界通の知人から最近聞いた話では、とある期待の映画制作が著作権のトラブルで暗礁にのりあげているのだが、早い話が著作権の二重売り。

 そもそも著作権意識の薄い中国では、人の著作権もオレのもの、と主張する輩が少なくない。しかしこういう事件のほとんど警察沙汰にならず、コネと権力と圧力でなんとかしてしまうのが中国流。詐欺まがいの多額の出資をむしり取られた日系企業の話も聞いた。業界では有名な話でも、さまざまなしがらみから表沙汰にはできないが。

 小室容疑者のつまずきの原因は香港、中国圏進出だっという。海賊版CDの売買やインターネットからの違法音楽ダウンロードを何の罪の意識もなく行われる中国では、いかにその音楽がヒットしても人々に愛されても、CD売上げにつながらない。それに加えて、したたかでアウトローな自称クリエイターの中国人に乗せられてたかられてむしられた部分もあるのではないだろうか。しかし同じやり方を日本でやればアウトだ。

 小室容疑者を破滅に追い込んだ要因の一つと思われる中国では、きょうも、著作権料の払われていない彼の音楽が流れているだろう。そう思うと私も彼への同情を禁じ得ない。(執筆:中国ウォッチャー 三河さつき)

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