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2008年11月05日(水) 08時00分

小室容疑者逮捕 盲点ついた著作権二重譲渡産経新聞

 小室容疑者が詐欺の“道具”に使った音楽著作権のビジネスは、仕組みが複雑で関係者以外には分かりにくい。今回の事件を契機に、制度の不備や見直しを指摘する声も出ている。

 音楽著作権は、作曲家や作詞家が作品の使用を許諾・禁止できる権利。コンサートやカラオケなどで演奏する演奏権、CDや楽譜などを製作する複製権、CDやビデオなどをレンタルさせる貸与権などがあり、著作者は一部、または全部を譲渡することができる。

 通常、作詞家や作曲家はエイベックス系、ソニー系のような音楽出版社と著作権の譲渡契約を結ぶ。

 出版社は、CDの売り上げ、テレビやラジオ、カラオケといった二次使用で生じる著作権料の集金を主に日本音楽著作権協会(JASRAC)に委託。JASRACが手数料を差し引いた著作権料が出版社に振り込まれ、出版社が50%を取った後、作詞家と作曲家に印税と呼ばれるロイヤルティーの形で支払われる。三者が均等に分配するケースもあるという。

 小室容疑者は、著作権を所有していない事実を隠して、投資家に著作権譲渡を持ちかけていた。音楽評論家で立命館大客員教授の反畑誠一さんは「音楽著作権の複雑さは一般には認知されておらず、小室容疑者はその盲点をついたのかも」と指摘する。

 ただ、「今回の事件のように、個人間で著作権譲渡のやりとりをするのは日本では考えられない」と話すのはネットワーク音楽著作権連絡協議会の佐々木隆一代表世話人。日本の音楽著作権の管理体制は米国などと同様に整備され、「有名な作詞家や作曲家の場合、著作権の譲渡など権利関係については第三者に任せることがほとんど」と語る。

 小室容疑者は、作詞・作曲した曲の一部を別の音楽出版社に二重譲渡していた。著作権関連に詳しい福井健策弁護士は「二重譲渡を防ぐため文化庁に著作権の登録制度があるが、手続きの煩雑さなど使い勝手が悪く、あまり利用されていない」と制度上の不備を指摘する。

 音楽著作権をめぐって刑事事件にまで発展するのは日本ではまれなケース。反畑さんは「事件の推移によっては、今後、業界が分かりやすいシステムを構築しなければならないなど、著作権ビジネスが大きく変わる事態になるかもしれない」と話す。

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