記事登録
2008年11月04日(火) 22時21分

<山形贈収賄>1審破棄、差し戻し 仙台高裁判決毎日新聞

 山形県長井市で起きた贈収賄事件の控訴審で、仙台高裁は4日、被告が不同意の書面を証拠に採用したとして1審判決を破棄し、山形地裁に差し戻す判決を言い渡した。志田洋裁判長は「採用要件を欠いた証拠を取り調べた法令違反があった。これらの証拠なしには1審は維持できなかった」と述べた。証拠採用の基本的ミスでの判決破棄は極めて異例。

 1審は、長井市総務課付主査、内谷昌春被告(47)が05年5月、ITサービス業「日本・アルカディア・ネットワーク」に業務を受注させる見返りに、同社営業主任、高橋芳徳被告(38)からパソコンなど計約33万円相当を受け取ったと認定。収賄罪に問われた内谷被告に懲役1年6月・執行猶予3年を、贈賄罪に問われた高橋被告に懲役1年2月・執行猶予3年を言い渡した。

 山形地検は、高橋被告が「わいろを要求された」と供述した警察段階の調書を提出。内谷被告は不同意としたが、山形地裁は証拠に採用した。警察段階の供述調書について刑事訴訟法は、被告の同意がない場合、被告本人以外の調書を証拠に採用することを原則禁じている。

 山形地裁は「正式なコメントは差し控えるが、今後、控訴審判決を精査し対応を検討する」。山形地検は「判決を検討の上、差し戻し審において、適切な立証に努めたい」とコメントした。

 早稲田大法科大学院の川上拓一教授(刑事訴訟法)は「非常にまれなケース。地裁の手続き違反は明らかだが、弁護側、検察側も違反を見逃した点で責任は免れない」と指摘した。

 両被告は捜査段階で容疑を認めたが、公判でともに否認に転じた。【細田元彰】

【関連ニュース】
大分教員汚職:贈賄の元校長に有罪判決 大分地裁
文科省汚職:贈賄側の会社顧問に有罪判決 東京地裁
医療機器汚職:防衛医大教授を逮捕 260万円収賄容疑
収賄容疑:逮捕の岐阜県岐南町長が辞職届
大分県教委汚職:贈賄の矢野哲郎被告が保釈

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081104-00000139-mai-soci