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2008年11月04日(火) 21時12分

<医療ベンチャー>角膜再生 仏の病院と共同開発毎日新聞

 フランスのリヨン国立病院と日本の再生医療のベンチャー企業が、傷ついた目の角膜を治す新しい治療法の開発を共同で進めている。世界中から人材が集まり、技術開発が進む欧米に、日本の医療ベンチャーが進出する例が増えており、先端の医療技術の育成に力を入れるフランスとの協力の成果に注目が集まっている。【リヨン(フランス南東部)で森有正】

 リヨン国立病院は、外傷や薬の副作用などで傷ついた角膜の治療法として、患者の口の粘膜から採取した細胞を特殊な技術で人工培養し、膜(シート)状になった細胞を移植して角膜の再生を促す技術を研究している。

 これまでは、培養した細胞を傷付けずに取り出すことに課題があったが、温度によって構造が変化するポリマーを主原料とする培養皿を利用することで、その課題を克服した。

 培養皿とシート状にして回収する技術を開発したのが、従業員40人の再生医療ベンチャー、セルシード(東京都新宿区)。岡野光夫東京女子医大教授らの技術を応用、医療現場での実用化を目指す。同社は01年に培養の基礎技術を確立、国内で薬の効果や安全性を調べる治験実施を目指した。しかし、当時、日本の承認審査は手続きに時間がかかっていたことなどから、計画は遅れた。

 リヨン国立病院から同社に技術協力の要請があったのが04年。その後、両者は共同開発を進め、患者16人に治験を行い治療法の有効性を確認したという。

 セルシードの細野恭史取締役は「フランスは再生医療の制度整備が進んでおり、研究開発が予想以上に早く進んだ」、同病院のオディール・ダムール細胞組織バンク所長も「セルシードの培養技術がなければ、新治療法は確立できなかった」と互いに協力の成果を強調している。

 セルシードはこれまで技術者を派遣する形で共同開発を続けてきたが、10月にリヨンに現地子会社を設立。09年にも培養細胞シートの販売承認を申請し、11年には欧州の30カ国での販売を目指す。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081104-00000115-mai-bus_all