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2008年11月04日(火) 16時38分

色あせた栄光 「時代の寵児」に捜査中国新聞

 幾度となく浴びてきたカメラのフラッシュに、もう栄光の色はなかった。四日、五億円の詐欺容疑で大阪地検特捜部が逮捕した音楽プロデューサー小室哲哉こむろ・てつや容疑者(49)。一九九〇年代にヒット曲を連発した「小室サウンド」の権利自体が疑惑のタネに。そこまで金に困っていたのか。かつての「時代の寵児ちょうじ」に捜査の手が及んだ。

 ▽麻布の高級マンション捜索

 詐欺容疑で逮捕された音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)の自宅兼事務所がある東京・西麻布のマンションには四日午前八時すぎ、大阪地検特捜部の係官ら十二人がテレビカメラに囲まれ、もみくちゃになりながら家宅捜索に入った。

 閑静な住宅街の高級マンションで、一階入り口にフロントがあるホテルのような形式。小室容疑者は最上階に住んでいるらしい。近くの福祉施設の女性職員(55)は「周りにちやほやされて、地に足の着いた感覚がなくなっていたのでは」とばっさり。

 一方、小室容疑者が卒業した東京都国分寺市の早稲田実業高校には「小室哲哉記念ホール」がそびえ立ち、その入り口には小室容疑者の手をかたどった実物大の彫刻も。

 この日は、早実初等部の入試があり、小室容疑者の詐欺事件について職員は「それどころではない」と困惑しながらも、「二年前の甲子園の優勝では随分、注目されたが、久しぶりの話題がこんな話とは」と嘆いた。

 ▽Tシャツ姿、うっすら涙

 数々のミリオンセラー曲を手掛けた“天才”ミュージシャンの目にうっすら涙が浮かんでいた。四日朝、詐欺容疑で大阪地検の取り調べが始まった音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)。背中を丸めて力なく下を向き、一斉に光るフラッシュに少し苦笑したような表情を浮かべ、大阪地検の庁舎へ。一時代を築いた面影は見られなかった。

 小室容疑者は、白のTシャツに黒のパーカ姿。午前七時五十分ごろ、大阪市内のホテルからワンボックス車に乗り込み、地検係官に両脇を挟まれるように後部座席に座った。やつれた様子で、目にはうっすら涙も。さかんに髪をいじり、悔しそうに唇をかんだ。

 約二十分後、百人以上の報道陣が集まり、ヘリコプターのごう音が鳴り響くなか大阪地検に到着。一斉にフラッシュが光り、報道陣が車に駆け寄ると、小室容疑者は垂れた前髪越しに軽く左右を見回し、口元を少しだけ緩めた。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200811040158.html