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2008年11月04日(火) 19時07分

巨額の著作権詐欺——“小室事件”と音楽著作権の関係ITmediaニュース

 音楽著作権の譲渡を持ちかけ、投資家から5億円をだまし取った詐欺の疑いで、大阪地検特捜部が11月4日、音楽プロデューサーの小室哲哉容疑者を逮捕した。音楽著作権をめぐる大規模な詐欺事件は珍しい。

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 報道によると小室容疑者は、自作の曲や歌詞など806曲の著作権を10億円で売却する取引を持ちかけ、前払いを受けた5億円をだまし取った疑いがもたれている。

 詞や楽曲の著作権——音楽著作権の複雑さが、今回の詐欺の背景にある。音楽著作権は「著作者人格権」「著作財産権」に分かれているが、今回問題になったのは著作財産権だ。

 著作財産権は、著作物を排他的に利用できる財産的権利。複製権、演奏権、公衆送信権などを含み、CD販売や音楽配信、カラオケ配信を行うにはこの権利が必要だ。一般的に「著作権」と言った場合は著作財産権を指すことが多い。

 作品を使う権利は作詞・作曲者が持っていると思われがちだが、プロの作詞・作曲者は、作品の著作財産権を「音楽出版社」に預けるのが一般的だ。音楽出版社はさらに、その権利を日本音楽著作権協会(JASRAC)などに信託するケースが多い。

 音楽の利用はCD、カラオケ、ネット配信、放送など多岐にわたり、個々の利用者と作詞・作曲者がその都度契約を結び、利用料を徴収するのは手間がかかる。JASRACのような著作権管理団体に信託すれば、利用者からまとめて徴収し、音楽出版社やアーティストに分配してくれるメリットがある。

 小室容疑者の場合、詞や曲の権利をエイベックス・グループ・ホールディングスや音楽出版ジュンアンドケイ、ライジングパブリッシャーズなど複数の出版社に預けており、各出版社はその権利をさらに、JASRACに信託していた。

 報道によると、小室容疑者の楽曲には年間3億円の著作権使用料収入があったという。小室容疑者はそのうち1億円をJASRACから、もう1億円を出版社から受け取り、出版社は1億円を受け取っていたという。小室容疑者側は「806曲がフルセットになっていることに意味がある」「全部僕に著作権がある」などと言って売却を持ちかけていたとされるが、実際には各出版社との契約や、各出版社とJASRACとの契約が問題になり、全部の譲渡は事実上難しい状態だったようだ。

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