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2008年11月03日(月) 10時25分

職業訓練補助金の不正受給多発 検査体制の甘さ露呈河北新報

 宮城県警が摘発した宮城理容技能学園(仙台市泉区、2007年廃止)の補助金不正受給事件が、職業訓練補助金の在り方に一石を投じている。学園の運営責任者らが、簡単に下りる補助金に目を付けていたことが表面化。東北の各県で同様の不正受給が多発しており、受給者へのチェック体制の甘さも浮き彫りになった。

 「前理事長らは、補助金を簡単に手に入れるノウハウを持っていた」。宮城県理容生活衛生同業組合の理事の一人はこう断言した。

 発言の背景には、1984年に発覚した、同組合関係者による補助金の不正受給問題がある。当時の役員が宮城県小牛田町(現美里町)に「宮城理容美容職業訓練校」を設立し、受講者数を水増しして県に補助金を請求。数年間で1000万円以上を不正に受け取っていた。

 当時は県が告訴せず、刑事責任は問われなかったが、構図は今回とほぼ一致する。前理事長の西条郁男被告(71)は調べに対し、「補助金を得るために学園を設立した」と供述しているという。

 古くからの組合員は「西条被告は当時の問題に関与していた。あの時、組合や県がしっかりとした対応を取らなかったから、同じような問題が再び起きた」と指摘した。

 職業訓練補助金の不正受給は、宮城に限った話ではない。東北で、過去5年間に発覚した補助金不正受給は表の通り。各団体とも受講者数を水増しし、正規の額以上の補助金を申請する手口。発覚まで、数年かかっているのも共通している。

 この補助金は国と県が半額ずつ負担し、県が窓口になり受給者に渡る。訓練施設や指導者を備えているなどの要件を満たし、県から認定を受けた団体が申請すると、補助金が下りる仕組みだ。

 受給後のチェック体制は各県でまちまちだが、問題発覚前までは、福島を除く5県いずれも書類検査だけだった。岩手、宮城、山形の3県はこれまでの検査の不備を認め、書類検査のほか現地調査や抽出調査を加えた。

 だが、抜本的な再発防止策が打てない状態が続いているのも事実。宮城県の担当者は「短期の訓練だと、受講生が学校からいなくなってしまい事実確認が難しい」と課題を挙げる。秋田県の担当者は「検査を強化したくても人手の問題がある。他県を参考に効果的な対策を検討したいが、今のところ受給者の善意に頼るしかない」と話した。

[宮城理容技能学園の補助金不正受給事件]2004—06年度にかけ、見習理容師計758人が学園で職業訓練を受けたとする架空の実績報告書を作成し、県に補助金を申請。補助金計534万6000円を受け取ったとされる。仙台地検はこのうち、05—06年度の406万8000円分を立件、補助金適正化法違反の罪で、県理容生活衛生同業組合の前理事長西条被告ら2人を起訴した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000014-khk-soci