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2008年11月03日(月) 01時50分

<聴覚障害不正取得>北海道の社保事務所、年金停止相談断る毎日新聞

 聴覚障害の身体障害者手帳不正取得問題で、函館市の男性(69)が04年に函館社会保険事務所に障害年金の支給停止の相談に訪れたにもかかわらず、事務所側から「問題ない」と言われ、今年まで支給が続けられたことが分かった。札幌市でも60代の男性が05年に市に手帳返還を申し出たが、市側が受け付けなかったという。早期に問題に気付く機会を行政側が見過ごしていたことになる。

 昨年12月に表面化したこの問題ではこれまでに800人以上が手帳を返還。診断した札幌市中央区の前田幸※(よしあき)医師(73)が虚偽診断書作成容疑で今年9月に家宅捜索を受けている。

 労災の相談などに応じる全日本建設交運一般労働組合(建交労)によると、函館市の男性は00年1月ごろ、前田医師の診断で最重度の聴覚障害2級の手帳を取得。しかし、障害の程度が2級に該当しないことに気付いた建交労の助言を受け04年秋、函館社会保険事務所を訪れた。

 男性は耳が聞こえにくいものの、毎日新聞の電話取材に応答できる状態。社保事務所でも口頭でやりとりしたが、医師の診断書があることを理由に「今まで通り(手帳を)持っていていい」と言われたという。男性は「あの時ちゃんと対応してもらえていれば」と残念がる。

 結局、男性は問題発覚後の今年1月に手帳を返還。障害年金の支給は5月分まで続き、総額は数百万円に達した。社保事務所に同行した建交労幹部は「医師の診断書がおかしいとは言えなかった。他の医師を受診するよう助言があれば、もっと早く問題が分かったかもしれない」と話す。道社会保険事務局運営課は「事実関係を調査している」として近く男性から事情を聴く。

 札幌市の男性は05年秋に手稲区役所に手帳返還の相談に訪れたが「医師の診断書があるので返還しなくていい」と言われたという。この男性も今年1月に手帳を市に自主返還した。市障がい福祉課は「事実は確認できなかった」とする一方、「手帳返還者から『以前、返そうとしたら返さなくていいと言われた』と苦言を言われ、対応した職員が『もし事実なら申し訳ない』と謝ったことがある」と説明している。【内藤陽】

 (※は、日の下に立)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000003-mai-soci