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2008年11月03日(月) 21時59分

東京、大阪などで地方債発行延期相次ぐ、金融危機の混乱で産経新聞

 世界的な金融危機に伴う債券市場の混乱で、10月に市場公募債の発行を予定していた16都道府県市のうち、大阪府や東京都など4自治体が発行を見送っていたことが3日、わかった。本来は株式に比べて安全性が高い地方債だが、投資家の買い控えが懸念される事態に陥ったためだ。今後も同様のケースがあれば、自治体の資金調達に支障が出る恐れもあり、市民生活への影響も心配される。

 10月の市場公募債の発行を延期したのは大阪府、東京都、愛知県、川崎市の4自治体。発行予定額は合計で1000億円だった。

 大阪府の橋下徹知事は、10月20日に東京都内で開かれた機関投資家向けの説明会の冒頭、「今日は府債はきっちり返すというのを説明します」と切り出し、「大阪の改革を市場で評価してほしい」と購入をPR。この一方で、府は10月30日に発行予定の5年債200億円の発行を見送った。

 見送りの理由は、金融不安の中で発行するには利率を高く設定する必要があったからだ。府は今年度、総額5200億円分を発行する計画で、11月にも400億円分を発行する予定だが、府の担当者は「市場の動向を見て、発行のタイミングを考えたい」という。府と同じく東京都も10年債と20年債計500億円分の発行を見送ったほか、愛知県や川崎市も府と同様の理由で10月分の発行をやめたという。

 発行見送りが相次ぐことになったきっかけは、10月10日に発行条件が決まった北海道債の利率が、前月を0・42ポイント上回る1・7%をつけたことだ。10月10日は、北海道が10月末に発行する5年債200億円の入札日。同日朝に大和生命保険の経営破綻が明らかになったこともあり、東証の平均株価は午前中に一時1000円以上下げた。入札が行われたのは、前場がひけた後の午前11時20分だったため、利率がはね上がった。

 利率は需給関係によって変わる。買いたい人が多ければ、低く抑えることができる。通常、株価が大幅に下がる局面では、安全性が高い債券を買う意欲が強まるはず。しかし、実際には逆になった。これについて総務省地方債課の担当者は「それだけショックが大きかったからではないか」と分析。つまり、不安定な環境の中では債券といえども、自治体の信用度よりも“買いたくない心理”が働いたことが数字に表れたとみられる。このため北海道は単純比較で前月分よりも約8000万円余分の利払いが増えることになった。

 この動きは今後に債券を発行する予定の自治体にも影響がある。今年度2700億円分を発行する予定の大阪市。あと1730億円分を11月から来年3月までに発行する予定。市の資金担当者は「不況時は地方債の人気は上がるはず。荒れた市場が落ち着き次第、発行のスピードを上げていきたい」。11月に約200億円の発行を予定する兵庫県も「市況を見極めたい」としている。

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