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2008年11月03日(月) 21時35分

F1のタイガー・ウッズ ハミルトン、黒人として初の年間王者に 産経新聞

 ブラジル・サンパウロで行われた自動車F1シリーズ最終戦で2日、マクラーレン・メルセデスの黒人ドライバー、ルイス・ハミルトン(英国)が5位に入り、F1参戦2年目で初の年間優勝を果たした。23歳での王座獲得は2005年のフェルナンド・アロンソ(スペイン、ルノー)の24歳を抜き史上最年少。“F1界のタイガー・ウッズ”が自動車レースの最高峰で人種の壁を破った。(ロンドン 木村正人)

 英BBCに、ラジコンカーの操縦機を操るハミルトン少年の映像が残っている。離ればなれに暮らしていた父、アンソニーさんから、5歳になったハミルトンに贈られた誕生日プレゼント。1台のラジコンカーが最初の一歩だった。

 ラジコンカーに夢中になったハミルトンは7歳のとき、国内大会で大人を相手に準優勝。その年のクリスマスにはレーシングカートを手に入れた。過去9人のオーナーを経てきたオンボロだったが、父の手で新品同然に修理された。その愛車を駆って初レースを制した。週末になると、カートや生活用品を詰め込んだトレーラーをつないだ古い乗用車で父親と各地を転戦し、腕を磨いていった。

 1985年、黒人のアンソニーさんと白人の母の間に生まれた。祖父はカリブ海のグレナダ出身の移民だった。10歳のとき、マクラーレンのロン・デニス代表に「いつかあなたのチームでF1を走りたい」と直訴した話は有名だ。才能をいち早く見抜いたデニス代表から英才教育を施され、昨年、黒人として初めてF1にデビュー。最後まで年間優勝争いを演じた。しかし、「レース界のタイガー・ウッズ」ともてはやされる一方で、肌の色に対する偏見に付きまとわれた。

 デニス代表は英BBC放送に「皮膚の色がメディアのヘッドラインを独占する価値があることには気づいていた。しかし、彼が黒人であることを考慮したことは一度もない」と語ったが、シーズン開幕前、スペインで行われたテストでは観客席に人種差別的な言葉が書かれた横断幕が掲げられ、ブーイングを浴びた。今季最終戦前にも、黒人のハミルトンに対する悪意に満ちたコメントが多数書き込まれたウェブサイトの存在が明らかになった。

 「ルイスは最高のドライバーだ」。カートに乗る黒人の少年たちはみな、ハミルトンにあこがれる。白人優位のF1界。ハミルトンの快挙が新しい時代への扉を押し開けた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000549-san-int