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2008年11月02日(日) 20時48分

危機管理とコンプライアンスが命運握る 企業不祥事に専門家警鐘産経新聞

 発表の遅れや隠蔽(いんぺい)、反社会的勢力とのつながりなど、企業不祥事の連鎖が止まらない。不正が相次いだ食品業界を中心に、消費者の目が厳しさを増す中、専門家は「問題ある企業に対し、金融機関が即座に資金供給を絶つ姿勢も出始めた」と最近の傾向を分析。危機管理とコンプライアンス(法令順守)が企業の命運を握る時代に突入したとして、「隠し通すような昔のやり方はもう、通用しない」と経営者に意識改革を訴えている。

 近年、企業の存続を脅かす要因について、神戸市中央区に法人や自治体対象の「後藤コンプライアンス法律事務所」を開設した元警察庁キャリアの後藤啓二弁護士(49)は「2大リスクがある」と指摘する。一つは「暴力団など反社会的勢力(反社)の接近」、もう一つは責任転嫁や隠蔽など「不祥事発覚時の危機対応ミス」だ。

 反社の接近をめぐっては、東証2部に上場していた建設・不動産会社「スルガコーポレーション」(横浜市)の破綻劇が痛烈な教訓を残している。暴力団と関係の深い業者に地上げを委託したとされ、この業者が今年3月に逮捕されると、わずか3カ月後には民事再生法申請に追い込まれた。

 スルガ社の資産状況は決して悪くなかったとされる。だが、事件が表面化すると、反社とのつながりを嫌った銀行が次々と取引を停止、当座の資金繰りができず、瞬く間に経営に行き詰まったという。後藤弁護士は「スルガ社の問題は、法令違反に対する金融機関の厳しい姿勢を鮮明にした」と説明する。

 危機対応ミスについては、後藤弁護士が大阪府警で生活安全部長を務めていた平成14〜15年、自ら指揮を執った「ミスタードーナツ」による食品衛生法違反事件が印象的だという。

 法定外添加物を使用した肉まんを販売したとして、運営会社の「ダスキン」幹部らを書類送検して捜査は終結したが、「不祥事の隠蔽が、いかに大きなダメージになるか、最初に示した事件だった」と振り返る。

 同事件をめぐるダスキン株主代表訴訟で大阪高裁は、添加物の混入を積極的に公表しなかったとして、旧経営陣に総額約53億円もの賠償を命令。「取締役の公表義務を認めた初めての判決」と評価され、今年2月に最高裁でこの判決が確定している。

 後藤弁護士は「経営者が日ごろから覚悟を決めておかないと『隠し通せれば…』という誘惑に負けてしまう」と指摘。その危険はどの企業にもあるとして「取締役会で情報を共有するなど、隠蔽させない制度作りが重要だ」と強調する。

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