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2008年11月02日(日) 01時28分

<パナソニック>電池に狙い 成長分野補強へ 三洋買収方針毎日新聞

 パナソニックが三洋電機を買収する方針を固めたのは、三洋が得意とする電池事業を取り込み、成長を加速する狙いがある。09年度までに売上高を10兆円とする目標を達成する上でも大きな弾みとなるが、この時期に買収交渉が浮上したのは、世界的な金融危機の逆風の中、金融機関が保有する三洋の優先株の処理を急いだ事情もある。一方、三洋側には経営の独立性を失うことに抵抗感があり、今後の交渉でいかに落としどころを探るかが焦点になる。【上田宏明、宮崎泰宏】

 パナソニックは薄型テレビなどのAV(音響・映像)製品から白物家電(冷蔵庫や洗濯機など)、電子部品まで幅広い事業領域を持つが、太陽電池は00年ごろ大幅に事業を縮小し、事実上撤退。太陽電池は地球温暖化問題で世界的に市場が急拡大しており、パナソニックにとっては国内3位の三洋を買収することで再び参入を果たせるメリットがある。

 また、携帯電話などに使われるリチウムイオン電池で三洋は世界首位。パナソニックも大阪市に約1000億円を投じて新工場を計画するなど投資を加速しているが、買収が実現すれば一気に世界シェア5割近くを握る。

 一方、三洋の優先株を1株70円で取得した米ゴールドマン・サックス、三井住友銀行、大和証券SMBCの金融3社にとっても、世界的な金融危機の中、売却で利益を出せる。三洋の経営再建は08年3月期連結決算で4期ぶりの最終黒字に転換するなど順調だったが、株価急落による“待ったなし”の状況下、早期の売却交渉に傾いたとみられる。

 資金力のない企業が相手では三洋の事業を一括で売却するのは難しく、事業の切り売りから企業解体につながる懸念もあるが、その点、パナソニックなら手元資金が約1兆円と潤沢で「理想的な売却先」(業界関係者)といえる。三洋創業者の井植歳男氏はパナソニックの創業者・松下幸之助氏の義弟で、歴史的なつながりも深い。

 ◇三洋側には抵抗感

 課題は白物家電や半導体など、重複事業の多さ。中村邦夫前社長(現会長)時代から大改革を進めてきたパナソニックとしては、三洋株の過半数を押さえるか完全子会社化して確実に経営権を握り、非効率な重複事業の統廃合に着手したい意向とみられる。

 しかし、三洋の佐野精一郎社長は「優先株は自社株買いで消却するのがベスト」と強調。全株を自社で買い入れるのは資金的に困難だとしても、なるべく他社に売却される株式の割合を少なくし、経営の独立性を保ちたいとの思いをにじませていた。

 今後の交渉では、株式の売却価格や割合などのほか、いかに三洋側の抵抗感を和らげながら非効率事業の整理を進めるかなどが焦点。三洋の社名やブランドの存続、従業員の雇用確保なども大きな要素となりそうだ。

 ◇業界再編加速も

 買収が実現すれば、大手電機メーカー同士が丸ごと合併や買収で再編される初のケースになる。国内の電機業界では、10月に日本ビクターとケンウッドが経営統合したほか、薄型テレビや携帯電話など事業分野ごとの再編が進行。今回の買収話が、世界的な競争激化に対応した動きを加速させる可能性もある。

 国内電機メーカーの多くは長年「総花的経営」を続け、同じような製品を横並びで作る過当競争に陥ってきた。少子高齢化で国内市場が飽和状態になる一方、世界市場でも韓国サムスン電子などにシェアを奪われ、携帯電話やパソコンでの苦戦が目立つ。厳しい開発競争や価格競争を勝ち抜くには、持続的に利益を出せる体質を作ることが不可欠だ。

 国内メーカーもようやく重い腰を上げ、ここ数年は事業ごとの再編が活発化。10月の社名変更で勢いに乗るパナソニックと技術力に定評がある三洋との「合併メリットは大きい」(金融関係者)との声もあり「電機大手の更なる再編を促す可能性がある」(業界関係者)との見方も強まっている。【秋本裕子】

 【ことば】優先株 株主総会での議決権がない代わりに、配当利回りや解散時の財産配分などで優先される株式。高配当のため投資家に買ってもらいやすく、自己資本充実のための有効な手段となる。

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