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2008年11月01日(土) 22時36分

ストリートビュー、関西でも“物議”産経新聞

 インターネット上の地図から現地の写真を見ることができる米グーグル社の無料サービス「ストリートビュー(SV)」で通行人などが無断で公開され、プライバシー侵害の懸念が広がっている問題。関西でも住民らから苦情が相次ぎ、大阪府などは悪用の恐れがあるとして実態把握に乗り出した。一方、SVの登場を新たなビジネスチャンスとみる企業もあり、サービスの妥当性をめぐる議論が続いている。

■もっと検索してみる■ たとえば「ラブホテル」もこの通り…

 ■家が丸見え

 「一人暮らしの祖母の家が丸見えだ。犯罪に悪用されないか」。SVのサービス開始後、大阪市消費者センターには市民からの問い合わせが数件寄せられた。神戸市広聴課には「自宅の表札が読み取れる」との声があったほか、京都市市民生活センターでも似た意見が寄せられている。

 SVを使ってサービス対象地域の地図を見れば、車の上部に取り付けたカメラから連続撮影したとみられる写真が次々と現れる。なかには、警察官から職務質問されているようにみえる人、ケンカしているようにみえる男女の写真も。グーグルは通行人の顔や車のナンバーなどについては、自動画像認識装置でぼかしを施しているとしているが、処理が抜け落ちている写真もある。

 ネット上ではこうした写真ばかりを集めたサイトが多数作られる一方、ブログや掲示板ではプライバシーの侵害を懸念する声も上がっている。

 ■規制求める声

 大阪府茨木市議会では9月10日、中村信彦市議(民主みらい)が一般質問でSV問題を取り上げ「個人の家や通行人、車、店、登下校中の子供たちの写真が本人の許可なく世界中に配信されている」と批判した。

 中村市議は取材に対し「空き巣など犯罪の下見に悪用される恐れもある」と指摘。「府迷惑防止条例を改正して撮影自体を禁止するべきだ」と主張する。

 同市の小西利一人権部長は「企業活動であり安易に規制できないが、対策を研究していく」と述べた。

 同市からの問題提起を受け、府と府市長会は10月下旬から、SVを悪用した人権侵害の実例について実態把握に乗り出した。

 こうした動きにグーグル広報は「掲載を望まない方がいることは承知している。こうした場合は、ヘルプページを通じて、(グーグル側に)簡単に知らせる仕組みを用意している」とこれまでの立場を堅持。個別の申し出に応じて写真を削除する場合はあるが、自治体などからの全面的な撮影、公開の自粛要請には応じない姿勢だ。

 ■前向き活用も

 一方、SVの機能をビジネスや地域振興に活用しようという動きも出てきている。飲食店の口コミサイト「食べログ」では、店舗の場所の表示にSVを利用。小樽商科大(北海道小樽市)の学生らが運営するグルメ・観光情報サイト「おたるクーマップ」でもSVを使い、市内の飲食店や宿泊施設を紹介している。

 不動産仲介業のヒューネル(東京)もマンションなどの分譲物件の紹介にSVを利用。「現地に足を運ばなくても周辺の状況が分かる」と利用客からは好評だという。



■森井昌克・神戸大大学院工学研究科教授(情報通信学)の話

 「自分が望む情報を、いつでも得られるのが情報化社会の本質。こうしたサービスを規制すれば、情報化社会に取り残されてしまう。日本人はどちらかというとプライバシーの意識が甘く、本当に見られたくないなら、自ら守る姿勢が必要」


■ITジャーナリストの津田大介さんの話

 「プライバシーの考え方は国によって違うのに、グーグルは日本でサービスを始める前にサービス内容を調整することをせず、コンセンサスを得る努力を怠った。治安情報と組み合わせて犯罪防止に役立てるなど、社会にプラスになる使い方を模索していくべきだ」



【用語解説】ストリートビュー

 ネット検索最大手、米グーグル社の地図検索サービス「グーグルマップ」の付加機能。昨年5月に米国でサービスを始め、日本では今年8月5日から東京や大阪、京都、神戸など12都市を対象に開始した。地図の道路をクリックすると、その道路を車で通行しながら撮影したとみられる高さ2・5メートルからの360度パノラマ写真を無料で見ることができる。以前から官公庁など法人向けに同様のサービスを提供していた日本企業もある。

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