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2008年11月01日(土) 00時00分

<下>日本一管轄広い 釧路地裁読売新聞

選ばれた人に配慮、あの手この手…宿泊先紹介、出前手配など

 裁判員に選ばれると、朝から晩まで3日間程度は裁判所で「缶詰め」になる。昼食はどこで取るのか、自宅が遠い場合はどこに泊まるのか——。裁判所の試行錯誤が続く中、釧路地裁は全国最大の管内面積の広さに頭を悩ませている。

 管内面積は約2万8000平方キロ。釧路地裁の管内は四国の約1・5倍だ。同地裁は北見などに支部もあるが、裁判員裁判は地裁に一本化されているため、例えばオホーツク海側の遠軽町の裁判員の場合、同地裁までは車で片道4〜5時間。同地裁が行ったアンケートでは、同地裁まで2〜3時間かかる人は実に約4割に上った。自家用車の使用を考えている人が多いため、冬場の天候も心配だ。

 遠方からの裁判員候補者に配慮して、同地裁は候補の中から裁判員を決める最初の「選任手続き」をすべて午後から行うことを検討中という。日帰りできない遠方者には「お勧め」宿泊先を紹介し、宿泊料も負担する。

 札幌、旭川などの大都市圏とは異なり、裁判所周辺に飲食店が少ない地方都市では、昼食場所の確保も頭の痛い問題だ。市中心街から離れた場所にある釧路地裁は、裁判員が出前を取れるようにする予定だ。地裁内の食堂は規模が小さいため、普段から地裁職員がなじみにしている「とっておき」の店を紹介するという。

 また、地裁食堂を利用した場合、一般傍聴者と接触したくない裁判員には、控室まで「所内出前」に応じることも検討している。

 釧路地裁をはじめ道内の各地裁が、裁判員に対する細やかなサービスを検討しているのは、本州と比較して管内面積が広く、繁忙期には仕事から手を離せない農業や漁業など1次産業従事者が多いためだ。

 多くの道民に裁判員を引き受けてもらうためには、いかに道内特有の地域事情に配慮できるかにかかっている。各地裁は今後も実態調査を続け、制度開始のギリギリまで知恵を絞ることになりそうだ。

(この連載は、酒井麻里子、福島憲佑、小倉剛、木村雄二が担当しました)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/feature/hokkaido1225248391333_02/news/20081106-OYT8T00388.htm