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2008年11月01日(土) 15時01分

<不正経理>29都府県「なし」 でも7割「調査する」毎日新聞

 会計検査院が指摘した12道府県の不正経理問題に、全国の自治体が揺れている。毎日新聞がほかの35都府県に不正経理の有無などを調査したところ、8割を超える29都府県が「ない」と回答した。一方で23都府県が「調査する」「検討中」と答えた。問題発覚後に内部調査した複数の自治体で不正経理が発覚し、信頼性を揺るがす事態に発展した。自治体担当者は「どんな切り口で不適正とみなしたのか」と、近く公表される検査院の報告書に戦々恐々としている。【石原聖、江畑佳明】

 毎日新聞は10月31日時点で▽12道府県と同様の不正経理があるか▽内部調査するか−−などを調査した。29都府県が「不正なし」と回答。このうち、12県は「調査もしない」と答えた。「調査する」は22都府県、「検討中」は1県で、不正はないが調査する自治体が7割超を占めた。

 調査しないとした12県の中には「99年にカラ出張が相次いで発覚し、内部の調査体制を強化してきた。これまで検査院から同様の指摘を受けたこともない」(富山)、「97年に発覚したカラ出張問題で不正は出し切った」(福井)と言い切る自治体もあるが、少数派だ。多くは架空発注による「預け」など「組織的な不正はない」という見解で、「不適正」と指摘される可能性は否定しない。

 「組織的な不正経理は一切ない」と答えた宮城県は「12道府県で実施した調査が行われれば厳しい指摘を受けることはあるかもしれない。ただ、それは検査院と県の認識の違い」と説明し、「預けや裏金作りは行われているはずがない」と回答した兵庫県は「流用ではないが経理区分は誤解を受けないよう明確にする必要がある」と話す。昨年裏金問題が発覚し、全庁調査したばかりの宮崎県も「もう裏金はないと思うが、見解の違いはあり得る」という。

 調査すると回答した22都府県もスタンスは同様だ。経理の再点検を指示した山梨県の横内正明知事は「アルバイトの賃金や旅費などが補助事業の対象として適当かどうかは、検査院の見解と相違がある問題で事務処理ミスのようなものだから、あるかもしれない」と話す。埼玉県は上田清司知事が「全国から抽出した12道府県すべてで見つかった。まず47自治体すべてに(不正経理が)あると思うのが自然」と調査を命じたところ、03〜07年度で約1000万円の不正経理が見つかった。

 検査院に不正経理を指摘された後に独自調査した愛知県や京都府で新たな裏金が見つかり、消極的な姿勢を撤回する自治体も。当初は「適正に処理されている」と回答していた奈良県は「調査する」と立場を変えた。荒井正吾知事は29日の記者会見で「大丈夫ではないかもしれない。各地方で統一的な基準で検査するのが望ましく、検査院の基準が一番基本。これまでの調査では不徹底と判断される可能性がある」と述べた。

 98、04、05年に裏金問題が発覚し、現在も管理職が返還中の佐賀県の担当者は「痛みがあるので忘れられないが、時間がたてばタガがゆるむ可能性はある」と打ち明け、調査を始めた。

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