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2008年10月31日(金) 23時39分

航空幕僚長 田母神氏更迭 過去にも問題発言、隊内に衝撃毎日新聞

 正式に届けず投稿した不適切な論文で、航空自衛隊トップが更迭に追い込まれた−−。空自の田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長が「日本は侵略国家であったのか」のタイトルで論文を公表した問題で浜田靖一防衛相は31日夜、田母神氏を更迭した。これまでも同様発言を繰り返していたため「いつか失敗するのではないかと心配だった」との厳しい声も聞こえた。

 防衛省は内規で、隊員が職務に関する意見をメディアなどで発表する際、文書で上司に届けることを求めている。空幕長の場合、官房長に連絡する必要があった。だが関係者によると、田母神氏は論文を「職務には関係のない、個人的な研究内容の結果を投稿する」と説明し、正式な文書による連絡は不要と考え、背広組への連絡は口頭で済ませただけだったという。

 制服組の一部は、政府見解と異なる論文の内容を危ぶみ、田母神氏に対して論文投稿を見合わせるよう水面下で説得を続けたが「個人的な持論」という主張に押し切られた。

 制服組幹部は「自衛隊では、来栖発言など言葉遣いを誤って幹部が責任を問われる歴史が繰り返されてきた」と説明。田母神氏については「ユーモアを交ぜながらも、どこまで制服組の発言が許容されるかのパイオニアになろうと瀬踏みしている印象があった。すごいなと思う半面、いつか失敗するのではと心配だった」と話した。

 いったん帰宅後、騒ぎが大きくなって再び外出した田母神氏は「更迭」の連絡を電話で受けたとみられる。田母神氏は「自分の思いを書いた」と浜田防衛相らに釈明した。浜田防衛相は31日夜、報道陣に「本人には立場上問題ではないかと話した。もしも(反響を呼ぶことが)分かっていれば、また違った対応を取ったでしょう」と突き放した。

 田母神氏は福島県出身。ユーモアを交えながらぼくとつとした口調で語り、部隊内では政治と安全保障に関するストレートな発言は有名だった。周囲にも「国民に対し、制服組がきちんと説明責任を果たすべきだ」という信念を強調していた。 その発言が論議を呼ぶこともあった。4月の記者会見では、イラク派遣部隊の多国籍軍兵士輸送に関して名古屋高裁が出した違憲判断について、人気タレントのギャグを引用して「そんなの関係ねえ」と発言。その後「(司法判断が)直ちに我々の仕事に関係しないという意味だった」と釈明した。

 今回の論文には、部隊内の講演などで田母神氏が度々触れる内容も多く「いつもの持論で、空幕長ならやりそうなこと」との見方も少なくない。だが背広組幹部は「言いたいことがあっても、解散が延期され野党が攻撃材料を探している中では、やはりタイミングが悪い。イラクからの空自部隊撤収が12月にあるのに」と心配していた。【本多健】

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