記事登録
2008年10月31日(金) 23時29分

繰り返される「過去の歴史発言」での更迭産経新聞

 航空自衛隊の田母神(たもがみ)俊雄幕僚長は、「日本は侵略国家であったか」と題する論文を書いたことで更迭が決まったが、こうした「過去の歴史認識」に関する発言では、これまでに何人もの閣僚らが更迭に追い込まれてきた。歴史認識をめぐって繰り返される更迭劇は、日本が「過去の歴史の呪縛(じゅばく)」から解き放たれない現状を物語っている。

 浜田靖一防衛相が田母神氏の更迭を決めたのは、論文に野党が強く反発、今後の国会運営に大きな支障を来すことが明らかなうえ、「平和の党」を掲げる連立相手の公明党も、更迭を求めることが確実だったためとみられる。外交上も中国や韓国などが反発するのは避けられない。先送りされたとはいえ、衆院解散を任期満了の来年9月までにやらねばならない政府・与党としては、ダメージを最小限に抑えるためには、やむをえないと判断してのことだろう。

 「過去の歴史認識」をめぐる発言では、昭和61年に藤尾正行文相が「日韓併合は韓国側にもいくらかの責任がある」と発言して更迭。63年には奥野誠亮国土庁長官が「第2次大戦は日本の安全のための戦いであり、侵略ではなかった」と発言し、辞任した。

 平成に入っても、6年に永野茂門法相が「南京大虐殺はでっち上げだと思う」、桜井新環境庁長官が「日本は侵略戦争をしようと思って戦ったのではない」と、それぞれ発言して辞任。7年には江藤隆美総務庁長官がオフレコ懇談で「植民地時代には日本が韓国にいいこともした」と発言したことが、韓国の東亜日報に報道され、辞任に追い込まれた。

 こうした「言葉狩り」のような更迭劇が続くのは健全とは言い難い。確かに田母神氏の論文の内容は政府の公式見解と異なる。しかし、「過去の歴史」の判断は事実の検証の仕方や立場などによって異なるのは当然だ。政府の公式見解が、綿密な検証や議論によって作られてきたかも疑問だ。

 日本が「真の歴史認識」を構築するためには、たとえ政府部内であっても、自由に議論を交わせる土壌があってもいいのではないか。田母神氏の更迭は「過去の歴史の呪縛」を示している。(高橋昌之)

【関連記事】
【麻生政権考】集団的自衛権に踏み込む 阿比留瑠比
日米同盟重視の表れ 麻生首相の集団的自衛権解釈見直し発言
【麻生vs小沢】民主、マニフェスト提示に胸を張る
【正論】拓殖大学学長・渡辺利夫 「新脱亜論」で訴えたかったこと
恒久法制定に前向き 首相、自衛隊随時派遣へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081031-00000620-san-pol