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2008年10月31日(金) 22時19分

「沖縄ノート」差し止め訴訟 上告審では真正面から判断を産経新聞

 沖縄集団自決訴訟の控訴審判決で大阪高裁は1審判決と同様、元戦隊長らが集団自決を命じたとする『沖縄ノート』の記述の真実性は否定したものの、著者の大江健三郎氏が真実と信じる相当の理由があったとする「真実相当性」を根拠に原告側の請求を棄却した。

 ただ、控訴審で原告側が問うたのは、出版時の大江氏の認識ではなく、元隊長による“直接命令説”が揺らぐ現在も、当時の記述のまま増刷を続けることが許されるのかどうかだ。その争点について、「表現の自由」という別次元の論理を楯に、原告側請求を退けた高裁の判断には違和感を覚えざるを得ない。

 軍命令説をめぐっては、これまでに作家の曽野綾子さんが渡嘉敷島の現地取材を経て出版した『ある神話の背景』で疑問を呈し、座間味島の生存者が年金を受け取るために軍命令と偽証したなどと否定的な証言も多く存在している。

 しかし、2審判決は「仮に後の資料から誤りとみなされる主張も、これに対する寛容さこそが自由な言論の発展を保障する」などとし、大江氏をいかに救済するかという姿勢だけがにじみ出ているように映る。

 さらに、座間味島の村の幹部から自決用の手榴(しゅりゅう)弾の提供を求められた元戦隊長が断り、解散を命じたとする新証言についても、枝葉末節部分での矛盾を理由に「虚言」と一蹴(いっしゅう)した。上告審では真正面からの判断を期待する。(津田大資)

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