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2008年10月31日(金) 02時59分

「拉致再調査拒否」 北朝鮮が中国に伝達産経新聞

 日本と北朝鮮で合意されていた日本人拉致被害者の「再調査」について、北朝鮮側が中国政府に「メリットがない」として拒否する考えを伝えていたことが30日、わかった。複数の日朝関係筋が明らかにした。北朝鮮の方針は中国政府を通じて日本政府にも伝えられたという。これを受け、日本政府は北朝鮮に効果的な圧力をかけるため制裁措置を見直すべく動き出した。また、外務省主導による外交ルート一辺倒だった対北朝鮮交渉の在り方を変え、新たなルートの開拓を目指す方針だ。

 日朝関係筋が在京中国大使館関係者の話として明らかにしたところによると、中国政府高官は9月の福田康夫前首相の退陣表明後、北朝鮮政府高官と意見交換した席で、日本人の拉致問題の再調査を開始する考えがあるのかをただした。これに対し北朝鮮高官は「仮に調査委員会を立ち上げたところで、どんな結果になっても日本国民は納得するはずがない。結局、(北朝鮮にとって)再調査は何のメリットにもならない」と述べたという。

 同高官はまた、拉致問題の再調査が合意された、6月の日朝実務者協議の日本側代表である外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長への不満も表明したが、理由は明らかにしなかったという。

 再調査の合意を受けた8月の日朝実務者協議では、北朝鮮側が(1)拉致被害者に関する全面的な調査を行う(2)権限を与えられた調査委員会を設置し、可能な限り秋までに調査を終了する−ことを確認。日本側は北朝鮮が再調査に着手した時点で人的往来の禁止やチャーター航空便乗り入れの禁止という制裁措置を解除する方針を発表していた。

 しかし北朝鮮側は、福田前首相が退陣表明した直後の9月4日、在北京の大使館ルートで「日本側の新政権が合意履行についてどういう考えか見極めるまで、調査委員会の立ち上げを差し控える」と通告してきた。麻生太郎首相が就任後の今月22日には、北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」が「麻生首相は政争に巻き込まれて朝日政府間合意を白紙にした」と批判、日本側の理由で再調査が行えないと主張してきた。

 日本政府も今月10日の閣議で、北朝鮮籍船舶の入港全面禁止など、日本独自の制裁を半年間延長することを決めた。

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