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2008年10月30日(木) 00時05分

最古級の源氏物語写本 甲南女子大所蔵の「梅枝」の巻中国新聞

 甲南女子大(神戸市)が所蔵する源氏物語「梅枝うめがえ」の巻が鎌倉時代中期(十三世紀半ばごろ)の写本とみられることが分かり、同大学が二十九日発表した。現存している「梅枝」の写本では「保坂本」と呼ばれるものと並び最古級という。

 源氏物語の代表的な写本である藤原定家編さんの「青表紙本」とは異なる独自の文があり、大学は「源氏物語研究の貴重な史料になる」としている。

 幕末に江戸城明け渡しなどにかかわった幕臣・勝海舟の蔵書印があり、勝が手に取って読んでいた可能性もある。

 同日、記者会見した甲南女子大の米田明美よねだ・あけみ教授(日本文学)によると、写本は縦横約一五・五センチのほぼ正方形で本文部分が六十五ページ。一九七三年に大学が京都の古書店から購入した。

 源氏物語千年紀にちなみ九月、関西大の田中登たなか・のぼる教授(日本文学)に鑑定を依頼したところ、線が太く力強い書風や紙質などから鎌倉時代中期の書写と判明したという。

 五十四巻から成る源氏物語は作者紫式部が書いた原本はなく、書き写しで伝えられてきた。鎌倉時代初期に藤原定家が書写した青表紙本で現存するのは四巻だけとされ、梅枝は含まれていない。

 写本の記述では、主人公の光源氏が最愛の紫の上に「字がうまい」と伝える場面で、紫の上が「いたうなすかし給そ(ご冗談おっしゃいますな)」と応じる部分が青表紙本などにはないという。米田教授は「紫の上の新たな人物像が考えられるかもしれない」と話している。

 また、同大学所蔵の「紅葉賀もみじのが」の巻が鎌倉時代後期の書写とみられることも判明したという。

 写本は十一月四—七日と十日の五日間、甲南女子大図書館で無料で一般公開される。

【写真説明】 鎌倉時代中期の写本とみられる源氏物語「梅枝」の巻。中央上に勝海舟(勝安芳)の蔵書印が押してある

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200810290289.html