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2008年10月30日(木) 01時44分

横領公金の回収“放棄” 厚生労働省 時効を独自解釈、特別法適用産経新聞

 労働基準監督署の職員が公金を横領した事件が発覚した際、民法の時効を適用せず、早く時効を迎える労働者災害補償保険法を理由に「すでに時効になっている」と厚生労働省が判断し、返還請求しなかったケースが3件(計約4500万円)あることが29日、会計検査院の調べで分かった。公金の回収を事実上放棄したことになり、検査院は労災保険法の時効を適用したのは、不合理だとして、厚労省に民法の時効を適用するよう求めた。

 厚労省は今年1月に会計検査院の指摘を受けて、3月、大阪南労基署で起きた約1300万円の横領事件の被害額を全額、民法を適用して、元職員に対し、時効ぎりぎりで返還請求した。

 検査院が指摘するまで返還請求措置がとられていなかったのは、3件で計約7000万円の被害があった横領事件。

 平成13年7月に発覚した長崎県の厳原労基署職員による横領事件では、平成7年5月〜13年6月まで約800万円が横領され、うち約200万円が国庫に返還されなかった。

 14年に発覚した大阪府羽曳野労基署職員のケースでは、昭和63年11月から堺、岸和田、淀川などの労基署を異動する間に計約4900万円を横領、約3000万円が返還されていなかった。

 17年3月に発覚した大阪南労基署職員のケースでは、13年3〜6月に横領された障害一時金など計約1300万円の全額返還請求がとられていなかった。

 民法では不正に取得した公金を国庫に返還請求する際の時効は「被害者が損害及び加害者を知ってから3年」。一方、労災保険法と関連法では時効は「2年を経過した場合」とされている。

 長崎、大阪のいずれのケースも発覚後すぐに返還請求をすればよかったのに、労災保険法を適用したため、発覚時点ですでに時効と判断し、返還請求をしなかった。大阪南労基署のケースだけは検査院の指摘で民法の時効を適用、返還請求できた。

 検査院は民法より労災保険法を優先させた厚労省の措置は、理由がないとして、民法を適用するよう求めた。厚労省の労働基準局労災管理課は「特別法に時効の規定があったので適用した」と話している。

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