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2008年10月30日(木) 00時00分

<中>支援策 出遅れ自治体も読売新聞

裁判官と裁判員が話し合う「評議」。会社員などが参加するには、休暇取得など企業側の理解も必要だ(札幌地裁の模擬裁判で)=山本高裕撮影

 裁判員に選ばれたら、会社は休めますか——。裁判員制度の定着には、企業や自治体の支援と理解が不可欠だ。道内企業の中には、社員が裁判員に選ばれた場合を想定し、就業規則の改正で特別休暇を取得できるようにしたところも出始めたが、「制度が始まってから考える」と悠長に構える自治体もあり、支援策が出そろったとは言えない。

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 北洋銀行(札幌市)では、裁判員に選ばれた行員が特別の有給休暇を取得できる制度を昨年10月に導入。制度を利用して、札幌地裁などで開かれた模擬裁判に参加する行員もいるという。

 北海道電力(同)も今年4月、制度を想定して就業規則を改定し、特別の休暇が取得できるようにしたほか、北海道銀行(同)、JR北海道(同)も制度のスタートに合わせ、休暇制度の導入を検討している。

 企業にとって、短期間とはいえ社員を裁判員に取られてしまうことは戦力ダウンになる。しかし、各社は裁判員制度への協力を「企業の社会的責任(CSR)活動」の一環ととらえている所が多いようだ。

 一方、札幌、旭川、函館市などでは、職員が裁判員に選ばれることを想定して職員の特別休暇を導入する。札幌市ではさらに、裁判員に選ばれた市民への支援策も検討中で、子育て中の市民が選ばれた場合、子どもを一時的に預かる制度が利用できる仕組みを考えているという。

 しかし、道内の自治体の多くは「特別な理由があれば裁判員は辞退できるため支援策は考えていない」(室蘭市)、「介護、保育支援が必要な住民が出たら個別対応したい」(大空町)など市民への支援策は考えておらず、制度への理解は十分とは言えない。中には、「本人と裁判所の話なので考えてない」(千歳市)、「国が支援するのでは」(北広島市)との声もあった。

 裁判員候補に選ばれる確率が低い道東地区では、職員が裁判員に選ばれても休暇措置を用意していない自治体も。羅臼、標津、中標津の3町などは「職員の中から候補者が出てから考える」としており、各地裁は今後も、自治体や企業などに対して制度への理解を求めていくことにしている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/feature/hokkaido1225248391333_02/news/20081030-OYT8T00245.htm