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2008年10月30日(木) 14時01分

画面と連動して「動く3D画像が飛び出す」本:拡張現実技術の動画WIRED VISION

ドイツで2008年10月15日〜19日(現地時間)、フランクフルト・ブックフェアが開催された。来場した子供たちは、大好きな本からUFOが3Dオブジェクトで飛び出すのを目にして死ぬほどびっくりした。

だが、拡張現実(AR)技術の展開プランを多数用意しているドイツのMetaio社にとっては、今回の出展内容は最初の一歩にすぎない。ARは、われわれがお気に入りのゲームや書籍とかかわる際のあり方を変える可能性がある。子供たちが最初に試したときにおそらく気づいたように、現実世界に3Dの画像を重ねることは、没入感のある体験になる可能性がある。

ドイツのarsEdition社による近刊のインタラクティブ3D書籍『Aliens & UFOs』は、Metaio社のAR技術の好例だ。カメラを利用する認識ソフトウェアを通して、(UFOなどの)3Dオブジェクトを現実世界に重ね合わせるというもの。書籍を購入したユーザーは、あとからソフトウェアをダウンロードする。必要なものといえば、Windows搭載のパソコンと、比較的新型のウェブカメラだけだ。

このARの重要な仕掛けは、カメラを利用して書籍を認識する画像処理ソフトウェアと、組み合わせる画像をリアルタイムで生成する「マーカーなし」のトラッキング・システムだ。Metaio社のNoora Guldemond氏によると、カメラのフレームがトラッキングに利用されるということは、視覚化がされる際の背景画像にも必然的にそのフレームが使われることを意味する。「オーバーレイ(画像の重ね合わせ)が正確に行なわれ、かつ同期される」結果、3Dの画像が自然に動画中に現れる。

上の動画で確認できるように、カメラの前で書籍を動かすと、画像も3Dの各次元について沿った動きをする。

この技術が、子供向け書籍のおとぎの国にとどまるものだと思ってはならない。Metaio社は、5年以上をかけて開発したAR向け3Dのモジュール『Unifeye Platform』を、(プレゼンや建築設計のプロ用ツールとして)デザイン業界や工業プランニングの主要企業に売り込みたいと考えている。同社によると、広告へARを組み込むことを模索している企業も複数あるという。

しかし、大いに期待されている他のARやシミュレーション技術と同様に、Unifeye Platformにも制約がある。例えば、カメラをトラッキング・システムとして利用するので、レンダリングはそのカメラの視野の中に限定されることになる。また、ソフトウェアを機能させるためには、ページの各デジタル画像の具体的なサイズ(ミリメートルの単位まで)なども提供される必要がある。

ARを利用した広告があらゆる場所に入り込む可能性もあるし、あるいは逆に、AR対応眼鏡をかけた人が、不快な風景やうるさい広告などを自分の「現実」から消す可能性もある(後者はPopular Mechanicsの記事が最近考察していた内容だ)。

しかしそれは将来の話。もっと近い未来の話としては、他の種類の書籍(百科事典や旅行ガイド、料理の本など)にMetaio社のAR技術が使われることが期待される。同社の3Dアプリケーションはさまざまな出版社向けにカスタマイズ可能だからだ。

arsEdition社の『Aliens & UFOs』は今のところ、価格も発売時期も明らかにされていないが、Atlantica 3D Interactiveの本は11月中頃に発売される予定だ。

[大日本印刷も2007年11月にmetaio社と提携しており、10月中旬に行なわれた「ITpro EXPO 2008 Autumn」で、AR技術によるデモを行なった]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081030-00000004-wvn-sci