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2008年10月30日(木) 21時39分

<追加経済対策>景気浮揚どこまで…バラマキ色強く毎日新聞

 政府・与党が30日発表した「追加経済対策」は、定額減税をはじめ与党の要望をふんだんに盛り込み、バラマキ色の強い内容となったが、「景気を浮揚させる効果は期待できない」(証券アナリスト)との見方が大勢だ。麻生太郎首相は会見で「3年後には消費税引き上げをお願いしたい」と、景気回復が実現すれば財政再建路線に復帰する姿勢を強調したが、景気の先行きが見通せない中、「空証文」に終わりかねない。【須佐美玲子、清水憲司】

【追加経済対策の内訳と規模の図有り 追加経済対策:事業規模26.9兆円】

 ◇2兆円…貯蓄に回る恐れも

 「考えられる限りの大胆な対策を打って、内需を拡大し、日本経済の底力を発揮させる」。麻生首相は会見でこう強調。総額2兆円規模の定額給付金や、過去最大規模の住宅ローン減税など各種減税策の実現で自ら「全治3年」と診断した日本経済を立て直すとアピールした。

 しかし、対策の景気刺激効果は限定的だ。目玉の2兆円の定額給付金でさえ、国内総生産(GDP)を押し上げる効果は0.2%程度(野村証券金融経済研究所)にとどまる。

 内閣府経済社会総合研究所の調査によれば、99年に行われた「地域振興券」(総額7000億円)の場合、対象を子育て家庭などに絞ったうえで1世帯2万円が配られたが、実際に外食など新たな消費に回ったのは4000〜6000円程度。残りは生活必需品の購入に充てられたり、貯金に回ったりしたため、期待通りの効果は上がらなかった。

 また、麻生首相がこだわった過去最大規模の住宅ローン減税も「世界同時不況で日本でも雇用不安が広がる中、どれだけの人が持ち家を買えるのか」(アナリスト)との見方もあり、どこまで活用されるかは分からない。

 米国発の金融危機が深刻化した9月以降の円高・株安進行の影響は「日本の年間GDPを0.9%押し下げる」(野村証券金融経済研究所)と見られ、追加対策がすべて実現しても後退局面にある景気が反転するのは期待できない状況だ。

 ◇財政悪化に拍車も

 追加対策の財政支出規模は全体で約5兆円。財政投融資特別会計(財投特会)などの積立金から計約3兆円を捻出(ねんしゅつ)することで、赤字国債発行をギリギリ回避した形だ。しかし、公共事業と中小企業の資金繰り支援のための信用保証枠の合計7000億円は建設国債で賄われる。

 それでも財源は約1.3兆円足りない計算になる。このため、財投特会からの流用を拡大、本来は取り崩してはいけない積立金まで取り崩して財源に充てる方針だが、これは来年度に積み立てなければいけない分を「前借り」する形になる。

 財務省内では、「特別会計の積立金を活用するといっても、事実上、赤字国債を発行しているのと変わらない」との声も漏れる。さらに、「借金がまた増えて、将来の返済負担が多くなると、その時に必要な施策が打てなくなる」と懸念する声もある。

 麻生首相は会見で、年末に向けて消費税を含めた「税制抜本改革の全体像」を示す方針を表明するとともに、「3年後の消費税の引き上げをお願いしたい」と述べた。首相が3年後にせよ、増税時期を明示するのは極めて異例のことで、「将来世代の負担を無視した無責任なばらまき政策」との批判をかわす狙いもあるとみられる。

 しかし、今回は先送りされたものの、衆院解散・総選挙がそう遠くない時期に予想される中、年末に税制改正論議でどこまで増税を具体化できるか不透明だ。

 ◇ことば…赤字国債

 国が借金のために発行する債券(国債)の一つ。経常経費の不足を補うためのもので、発行のたびに特例法を制定する必要がある。道路、港湾など国の資産として残る社会資本を整備するための資金調達には「建設国債」という別の債券を発行する。赤字国債は90年度に発行額がいったんゼロになったが、国の歳出拡大に伴い発行規模が再び拡大した。08年度当初予算の発行予定額は20.1兆円。

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