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2008年10月30日(木) 21時23分

【追加経済対策】ビジョンなく、効果は限定的との見方多く産経新聞

 追加経済対策は、「国民生活の安全保障」と位置付けられた通り、住宅ローン減税や高速道路料金の引き下げなど暮らしに直結したメニューがずらりと並ぶ。家計の財布を暖めそうだ。企業業績の悪化で賃金抑制に拍車がかかろうとする中、「定額給付金」はまさに国からの“ボーナス”といえる。

 とはいえ、原油価格の高止まりに対応した総合経済対策と今回の追加対策をあわせても、景気浮揚の効果は限定的とみるエコノミストは多い。野村証券金融経済研究所の野木森稔エコノミストは、国内総生産の押し上げ度合いを「0・4ポイント前後」と予想する。

 政府・与党が対策で手をさしのべようとする先は、所得の目減りに不安感が膨らむ世帯や中小・零細企業、活力に乏しい地方だ。それはまた、大きな票田と重なる。「『お金をくれる』、『有料道路を走ったら安かった』というのはやっぱり(有権者には)うれしいだろう。国民に直結する政策となるとどうしてもバラマキになっちゃう」。与党のある地方組織幹部はこう吐露した。選挙対策色は否めない。

 追加対策の財源では特別会計の積立金などの「埋蔵金」を活用する。麻生首相は「赤字国債を発行しない」と胸を張ったが、将来の国債償還に充てる資金を‘流用’しており、借金を膨らませる結果になる。

 「日本経済は全治3年」と“診断”した麻生首相は経済情勢の好転を見極めたうえで、3年後の消費税引き上げを表明した。しかし、「金融危機」の旗のもとで作られた追加対策には、経済成長のビジョンは描かれていない。足元の不安を緩和する一方で、財政負担のツケを増税でまかなうシナリオだけが先行している。(比嘉一隆)

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