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2008年10月30日(木) 19時18分

FRB利下げ金利1%、0%台領域の可能性も産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】米連邦準備制度理事会(FRB)が29日、政策金利を0・5%引き下げ、1%の超低金利にしたことで、米国が「金利0%台」という未知の領域に踏み込む可能性も出てきた。米国のリセッション(景気後退)入りと世界同時不況の現実味が増す中、金融危機の拡大阻止に、なりふり構わぬ政策総動員が今後も続きそうだ。

 金融危機が実体経済に波及して、米国は「すでにリセッション状態」という見方が大勢になっている。

 7〜9月期の国内総生産(GDP)伸び率は前期の2・8%から大きく落ち込む見通し。世界経済の成長鈍化で輸出は低調。自動車産業をはじめ全米でレイオフ(雇用削減)の嵐が吹き荒れている。10月の消費者景気信頼感指数は過去最低の水準。クリスマス商戦も期待薄だ。

 一方で原油など商品相場は一気に冷え込んでインフレ懸念は大きく後退。逆に、需要低迷を通じて物価が下がるデフレ突入を危ぶむ声すら浮上し始めた。

 11月4日の大統領選から来年1月の新政権誕生まで政治空白期が続く。FRBには、次回12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、0%台に向けて追加利下げを求める圧力が強まるのは間違いない。

 世界の金融危機に詳しいメリーランド大のカーメン・ラインハート教授は「もし、信用状況が回復する兆しが長期間見られなければ、(米国にも)ゼロ金利策の可能性は排除できない」と指摘する。

 0%台が視野に入った超低金利策は、金融機関や企業の資金調達コストを抑制して、消費や投資など経済活動を刺激する効果が期待されている。しかし、日本では平成11年2月にゼロ金利策が導入された後も、景気低迷が続いた。効果はすぐには表れない。将来インフレが過熱する危険など副作用も大きい。

 FRBは29日の声明で「今後も必要な措置をとる」と言明し、未知の領域へ進む可能性を否定していないが、かつてないジレンマに直面することになる。

 一方、バーナンキ議長は今月中旬の議会証言で、追加的な財政出動を支持する考えを示した。財務省は7000億ドルの公的資金を投じる金融安定化策の対象を銀行から保険会社、さらには自動車産業まで広げる検討を続けている。米国発のリセッションが世界に波及するのを防ぐためにも、金融・財政を組み合わせた政策総動員が不可欠といる。

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